医療制度はいま、大変動期を迎えている。医師の紹介に関して圧倒的な影響力を発揮してきた大学医局が弱体化、若い医師を中心に自由な動きが活発化している。そんな状況の下で急激に業績を伸ばしているのが『民間医局』、メディカル・プリンシプル社が展開する医師限定の人材紹介業だ。その登録医師数は他社の追随を許さない、しかも優秀な医師が多く集まっている。同社のビジネスモデルと成功の秘密を中村敬彦社長に伺った。
■高邁な理想と低レベルな現実の間での戦い
価格戦略についても志の高さを訴求するために思いきったプライシングを打ち出す。医師の派遣業務に関する手数料は、派遣業全般からみて極めて低いレベルに留まっていた。一般の人材紹介業では30?50%は取っている手数料が、医師派遣に限っては5?10%ぐらいしかなかったのだ。
そこに同社は殴り込みをかける。「うちは最初から20%をぶち上げた。安かろう・悪かろうは絶対にダメだと。おかげで内外からの抵抗に遭いましたけれど(笑)」。
平均相場の倍以上もの値付けは、クライアントからは当然その理由を厳しく問われることになる。結果的にはこれも巧妙なプロモーション戦略となった可能性がある。すなわちあまりにも高い価格を提示されたときに、客が示す反応は大きく二通りに分かれるはずだ。「バカにするな」と怒り出すか、「そこまでの理由は何だ」と興味を示すか。
興味を示してもらえればしめたもの。同業他社とはまったく違うビジョン、ミッションをじっくりと聞いてもらうチャンスが生まれる。プライシングがドアオープンの切り口となるわけだ。
とはいえ創業当初の『民間医局』は致命的な欠陥を抱えてもいた。まだ知名度も何もない段階では優秀な医師を抱えることができていないのだ。高い理想と低い現実のギャップが内なる不満を爆発させる。
「営業マンは大変だったでしょうね。社長は理想を唱えるだけ。現実的には理想を主張できるだけの体制が整っていないのに、お客さんに対してはあくまで理想を貫き通して来い、値引きも一切まかりならんというわけです。そりゃ苦労させたと思います」。
いくら高邁な理想を掲げてはいても、地に足の着かないことは多々ある。理念のすばらしさだけで来月の資金繰りを回すことはできない。資金が回らなければビジネスは立ち行かなくなる。
「カッコいい理念だけでは商売は成り立ちません。そんなことは重々承知です。結局は自分たちの思いを崩しながらも、何とか生き延びて行くのが現実ですよ。ただ、我々が肝に銘じていたのは、究極のゴールだけは絶対に見失わないこと。状況に合わせて時に軸足がずれるのは仕方がない。ただしです、ズレを修正して理念に立ち戻れるかどうかで会社の運命は決まる。だからあえて社名に『プリンシプル』なんて大仰な言葉を使ったんです」。
さまざまな苦難に行く手を阻まれながらも同社は、どのようにしてブレイクスルーを成し遂げたのだろうか。
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FMO第2弾【メディカルプリンシプル社】
2007.12.11
2007.12.04
2007.11.28
2007.11.19