顧客が営業マンに求めるのは、抱えている課題を商品やサービスによって解決に導いてくれること。さらに言えば、商品の性能が顧客のニーズにマッチしなかったとしても、顧客が困っている原因はどこにあるのか、どんな商品をどのように使っていけばいいのかといった適切な助言ができればなお良いだろう。
トラブルはどんなベテラン営業マンにも起こりうる。大切なのはそれが起きた時にどう対処していくかであり、その対応の加減に悩みながら石井は試行錯誤を繰り返した。
「わかってきたのは、自分の身の丈を知る、ということです。それから、逃げるでもなく勇み足でもない対応をすることが、徐々にできるようになってきたのだと思います」と石井は当時を振り返る。
◀上司の佐野氏
そんな石井について上司の佐野はこう語る。佐野は大学も学部も石井の先輩。営業になってはどうかと声をかけた本人でもある。
「ある酒宴に新人だった石井さんを呼び、その会話力に惚れこんでコイツなら営業にいけるとチームに呼び寄せました。ところが一緒に仕事をし始めて、理工学部、それも同じ学科の後輩でありながら、ここまで数字に弱い人間がいるのだろうかと愕然としました。営業マンとして、数字に弱い上に執着心もないのは致命的だと思いました」。誘っておきながら佐野は悩んだが、しかしすぐにそれは杞憂だとわかった。
「石井さんは日々先輩たちから学び、数字にも強くなっていきました。さらに感心したのはその積極性です。ある大手企業の担当になったのですが、お客様に自分を知っていただくために、プラカードを作りそこに大きな文字で『アシスト 石井雄輔』と書いて首からさげ、毎朝お客様先の玄関に立つという行動に出たのです。選挙前に政治家が駅前などでやるあれです。「アシスト、石井です!」と毎朝挨拶を続けるうちに、お客様から、「毎日やってるねー」とか、「上司の佐野にやらされてるのかー」と気さくに声を掛けていただけるようになったのです」。このような工夫と努力をした新人をこれまで見たことがないと佐野はいう。また、だからこそ今日の、朗らかに笑う石井がいるのは言うまでもない。
営業という職種には1つひとつの行動に明確な正解があるわけではない。石井は場面ごとに上司、先輩、後輩から影響を受け、それを真似たり自分なりに取り入れたりしてきた。また正解がないだけに、時として目的を見失ったり、選択を迷うことも多い。そんな時に気持ちの整理ができたのは、先輩からの、「お前はどうしたいんだ?」と、ポイントをつく質問だったという。
自分の短所は、佐野が執着心のなさと指摘したように、何とかなるだろうと楽観的に考えてしまうところだと石井自身もわかっている。しかしこうして周りでさりげなくサポートしてくれるメンバーのお蔭で、営業マンとして、また1人の人間としても大きく成長してくることができたのだ。
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