スポーツの審判が、「誤審」と見られても仕方のない判定・裁定を行なってしまう背景にある「心理的バイアス」には、昨日ご紹介した「集団への同調圧力」によるもの以外にも様々ありますが、今日は「不作為バイアス」を解説しましょう。
具体例を示しましょう。
野球についてのデータ分析の結果では、バッターがツーストライクと追い込まれている状況(ツーストライク・スリーボールのフルカウントは除く)で、次にピッチャーが投げた球を見送った場合、本当は「ストライクゾーン」に入っていたにも関わらず、審判が「ボール」と誤審した割合が39%もありました。
これは、ツーストライク以外で見送った場合の誤審率の2倍の数値になっています。
また、逆に「スリーボール」の状況で、次の球をバッターが見送った場合、本来ボールであったのに「ストライク」と誤審した割合は20%で、全体の11%のやはり約2倍の誤審率となっています。
なぜこのような誤審をしてしまうのでしょうか?
要するに、審判はなるべく打席を長引かせ、バッター自身に打たせて結果(アウトかヒットか)を決めさせたいという
「無意識の心理」
が働いているのでしょう。
言い換えると、自分の判定によって、1塁に歩かせたり、ストライクアウトといった結果を招きたくないということ。
まさに、審判の誤審の背景には、
「不作為バイアス」
が働いているのだろうと考えざるをえないわけです。
どう考えても「ありえない誤審」はさておき、当事者である選手同士に勝負をつけさせるために、勝負を決めるような、決定的な判定をあえて行なわないという審判の
「不作為」
は、ゲームを面白くしますから、論理的ではないけれど、納得性の高い行動と言えるかもしれません。
*参考文献
『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』
(トビアス・J・モスコウィッツ、L・ジョン・ワーサイム著、
望月衛訳、ダイヤモンド社)
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2012.09.28
2015.07.14
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。