昨日取り上げた「マズローの欲求段階説」には「5つの欲求」が含まれている、という解説が一般的です。
マズローは、これらの欲求は、人をなんらかの行動に駆り立てる「動機づけ」として働く基本的な要因であるとして、「基本的欲求」と呼んでいます。
実は、彼の著作『人間性の心理学』では、基本的欲求として、5つの欲求に加えて以下の2つの欲求が解説されているのです。
・認知の欲求(知りたい、理解したいといった欲求)
・審美的欲求(調和、秩序、美を求めること)
同書では、他の5つの欲求との階層関係は、明確には語られていません。
しかし、
・認知の欲求-知りたい、理解したいという欲求、
・審美的欲求-調和、秩序、美を追求したいという欲求
という欲求の性質を考慮すると、低次の欲求がある程度満たされないと発現しない欲求であることは明白かと思います。
米国で最も権威のある心理学テキストのひとつ、『ヒルガードの心理学』では、認知、審美的欲求を含めた「欲求7段階説」として解説されており、以下のような順番に並べてあります。
---(欲求7段階説)------------------
1 生理的欲求(食物、水、空気、性等)
2 安全の欲求(安定、保護、恐怖・不安からの自由等)
3 所属と愛の欲求(集団の一員であること、他者との愛情関係等)
4 承認(自尊心)の欲求(有能さ、自尊心、他者からの承認等)
5 認知の欲求(知ること、理解すること、探求すること)
6 審美的欲求(調和、秩序、美の追求)
7 自己実現の欲求(自分がなりうるものになること)
------------------------------------
おそらく、ある程度生活の基盤が確立し、自尊心や他者からの承認も得られている状況において、ようやく精神的余裕ができてくるため、「認知の欲求」や「審美的欲求」も優勢になってくるということでしょうか。
さて、欲求の順番はさておき、これまであまり意識されてこなかったけれど、実のところ極めて重要だと思われる、この「2つの欲求」について考えてみましょう。
今日はまず、「認知の欲求」について。
知りたい、理解したい、探求したいといった欲求は、「好奇心」がベースにあるものと言え、人間だけでなく、高等動物全般にも明確に見られるものです。
認知欲求は、自分の生活環境を正確に知り、理解すること(=学習することによって、様々な危険をうまく回避したり、食料や伴侶をより高い確率で手に入れることに寄与します。
つまり、自らの「生き残り」や「種の保存」につながるわけですから、人間も含む動物に共通する、かなり根源的な欲求と言えるのかもしれません。
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2015.07.28
2016.08.08
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。