マズローが人の行動を駆り立てる「基本的欲求」として示した7つの欲求は、以下の通りでした。
マズローの「欲求‘7’段階説」(1)の続き
http://www.insightnow.jp/article/7206
---(欲求7段階説)------------------
1 生理的欲求(食物、水、空気、性等)
2 安全の欲求(安定、保護、恐怖・不安からの自由等)
3 所属と愛の欲求(集団の一員であること、他者との愛情関係等)
4 承認(自尊心)の欲求(有能さ、自尊心、他者からの承認等)
5 認知の欲求(知ること、理解すること、探求すること)
6 審美的欲求(調和、秩序、美の追求)
7 自己実現の欲求(自分がなりうるものになること)
(『ヒルガードの心理学』)
------------------------------------
上記7つのうち、次の2つの欲求は、これまでほとんど紹介されることはありませんでした。
・認知の欲求(知りたい、理解したいといった欲求)
・審美的欲求(調和、秩序、美を求めること)
前回は「認知の欲求」を取り上げました。今回は「審美的欲求」について考えてみましょう。
マズローは、著作『人間性の心理学』において、
“壁に曲がってかかっている絵を見てまっすぐにしたいという
強い意識的衝動をもつ場合、それは何を意味するのであろうか?”
と述べています。
「強い」かどうかは個人差があると思いますが、ほとんどの人が、まっすぐにしたいと思うのではないでしょうか。おそらく、動物たちで「曲がっているとなんとなく気持ち悪い」と感じるものはいません。そういえば、自然界には「直線」は存在しないのです。私たちが人口的に作る「直線」が日常にあふれているのは、「秩序」を生み出しやすいからなのかもしれませんね。
興味深いことですが、私たちが調和が取れている、美しいと感じる形状、音楽にはある程度共通性があります。たとえば、長方形の形。縦と横の長さの比がある一定の数値のものに対して、私たちは無意識に「美」を感じ取ります。
同様に、人の顔が「美しいかどうか」について、ある程度評価が一致します。よく「均整の取れた顔」と言いますが、「左右対称性」(シンメトリ)が評価のポイントであることが各種研究からわかっています。
そして、そうした均整の取れた顔、また顔色を見て私たちが感じるのは、肉体の健康さです。(もちろん、外見だけで、正しい判断ができるとは限りませんが)つまり、より好ましい伴侶を見つける「手がかり」として、バランスや色合いといったものに対する、ある程度誰にでも共通した美的感覚を発達させた可能性があります。大自然の中に「美」を見出し、それらを愛でる心もまた、環境変化に対する感受性を磨き、適応能力を高めることに役立っていると思われます。
次のページただ、ひとつ考えられるのは、人間だけが自然に従うのみな...
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2016.08.08
2015.07.10
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。