「ゲーミフィケーション」という言葉をご存じでしょうか? ゲームの持つ「楽しさ」や「人を熱狂させる仕組み」を仕事に取り入れようというコンセプトで、日本経済新聞にも大きく取り上げられ、最近のトレンドになっています。 本稿では、筆者の専門分野である人材育成にしぼって、ゲーミフィケーションが持つインパクトの大きさを考察します。
●立ち上がらなかった「教育ゲーム」
ゲームを人材育成の分野で使おうという試みは実は昔からあって、2000年頃にはコンピューター上の経営シミュレーションゲームでMBAを学ぼうという機運が盛り上がりました。
たとえば、「近未来において月旅行ビジネスを立ち上げる」というテーマのゲームは、MBA的な意思決定をシミュレートしつつ学ぶというなかなか面白いもの。
しかも、マーケティングやアカウンティング、そして事業価値算定による投資判断(ファイナンス)など、個々の要素をバラバラと学ぶのではなく、全体を統合しバランスをとることがゲームでの勝利につながるという設定で、「これは勉強になるなぁ」と当時の筆者は感心しながらプレイしたものです…
というのを思い出したのは、ごく最近。それまですっかり忘れてしまってた…
そう、実はコンピュータ上のゲーミフィケーションは、一瞬盛り上がりを見せたものの、今に至るまで人材育成のメインストリームになっていないのです。
●足りなかったのは「身体性」
あれから10年以上がたち振り返ってみると、やはりコンピュータ・シミュレーションがメインストリーム足り得なかったのは理由があって、それは
「身体性」の欠如
であるとの仮説を立てています。
というのも、この10年間、筆者は社会人向けの教育にどっぷり浸かり、たとえばロジカルシンキングでは5千人を超えるビジネスパーソンを教えてきました。そこから得られた結論は、人材育成というのは「単なる知識の伝達」ではないということ。
受講者が、育成プログラムを通して仕事で成果を出すためには、新たな知識を自分の既存の知識体系と統合する、内面化と呼ばれるプロセスが必要なのです。
その時にキーになるのが、自ら肉体を動かすことにより、頭で「分かる」だけでなく身体で「できる」ようになることであったり、そのような自己変革のプロセスへ踏み出す勇気をもたらす気持ちの高ぶりです。
実際、読者の方も覚えがあるのではないでしょうか?
後から振り返って「役に立った」と思う研修は、必ず「楽しい」や「ドキドキした」など感情を揺り動かされるような体験がともなっていることを。
そして、その逆に、単に知識だけを一方通行で聞かなければいけないレクチャーが苦痛であることも。
そのような気持ちの高ぶり・肉体の動きを「身体性」と呼びますが、これは当時の技術ではコンピュータ上のゲーミフィケーションでは実現できませんでした。そこに、メインストリーム足り得なかった大きな理由があると考えます。
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人材育成とビジネス教育
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