「ネット・オークション」のパイオニアであり、ネット通販初期のアメリカで一世を風靡しながら、近年アマゾンに押され気味のイーベイ。「SO・LO・MO(ソロモ)」をキーワードに巻き返しを図る・・・!
コムスコアの発表によれば、アメリカではモバイル機器の三台に一台がスマートフォンだ。日本でも「スマホ」利用者が976万人に達した。スマートフォンを片手に、「今、どこにいるか(ロケーション)」をベースに最寄の店舗情報を調べたり、比較ショッピングをしたり、友達の意見を聞いたり・・・といった行動が日常的なものになってきている。PCの前にはりついていなくても、まさしく、「いつでも、どこでも」、自分の欲しい情報があちらからやって来る・・・。真の「パーソナル・コンピューティング」が可能な時代になった。
「インフラ+ツール」の発達が、生活者マインドに変革をもたらし、その結果、新しい買い方、売り方が生まれている。売り手にとっては、無限の好機に満ちた、だからこそハードな時代でもある。
「ネット・オークション」のパイオニアであり、ネット通販初期のアメリカで一世を風靡したイーベイは、定価型マーケットプレイスのアマゾンに押され、一時期「落ち目」の感さえあったが、ここにきて前述の「SO・LO・MO」をキーワードに巻き返しを図っている。ここでは、イーベイの事例をあげ、「SO・LO・MO」の実践に迫ってみたい。
イーベイが実践するSO(ソーシャル)
アメリカの人気男性アイドル、ジャスティン・ビーバーの髪の毛(落札額4万668ドル)、投資家ウォーレン・バフェットとの昼食(落札額263万ドル)など・・・。世にも奇抜なものが売れるオークション・サイトとして誉れ高いイーベイだが、最近はそればかりではない。米ネット通販有数のトラフィックを活かして、ファッションの領域にも積極的に進出してきている。今流行りの「ネット・プライベート・セール(ネット上で限定顧客を相手に限定品を限定期間内に売り払うセール・フォーマット)」を取り入れた『ファッション・ヴォウルト(「ヴォウルト」は英語で、「金庫室」の意)』というマイクロサイト。初期のEベイをよく知る私のようなものだと、あまり、「イーベイ=新品」とか、「イーベイ=ファッション」とかいうイメージはないのだが、イーベイではなんと3秒に一足の靴が売れるらしい。
ファッションといえば、これほどソーシャルな商品カテゴリーも他にない。ファッションとは、自分自身を表現する媒体であるばかりでなく、他者との仲間意識を表現したり、他者の自分への評価を大きく左右したりもする。
週末に街に出ると、楽しげにお喋りをしながら買い物に興じている女性たちの姿に出くわす。試着したところをお互いに見せ合って意見を交換したり、良いと思うものを薦めあったり・・・。時には友達同士、時には母と娘の姿もある。また、彼氏を連れて買い物に着ている女性もいて、試着室の外でカウチに座って手持ち無沙汰そうにしている男性の姿を見ると微笑ましく思う。
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2011.10.07
2011.12.23
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。