ここ数年で一気に増えたFC(フランチャイズ)塾。その中でも個別指導の勢いはすさまじい。 現在、30社以上の企業で個別指導塾のFCを展開をしている。各社とも加盟者獲得に向け、商品やサービスはもとより、ビジネスモデルの差別化に入っている。変わりゆくFC塾、その中でも個別指導塾を徹底的に取材した。群雄割拠に入った個別指導塾FCを比較し、今後の動向とその先にある展望を迫った。
個別指導を中心に高まるFCのシェア
明光義塾や東進衛星予備校から始まった塾のフランチャイズ(以下FC)も、今や急激に増え続け、FC塾がない町を探すのが難しいと言っても過言ではない。ところによってはコンビニと数を競うほどである。それもそのはず、今回の調査によると、FC塾を展開している企業は80社あまり、その教室数は8,000以上になった。
総務省の事業所・企業統計によれば、学習塾の教室数は約五万であるから、全学習塾教室数の約二割近くがFC教室になる計算だ。『学習塾白書2011─2012』によれば、学習塾全体の業界売上規模は1兆3,020億円だから、学習塾FC市場規模は約2,600億円になる。学習塾の全教室数においては、ここ15年間5万前後で横ばい状態が続いているが、FC塾教室数は年々増加している。これは個別指導専門でFC展開する企業に加えて、集団指導塾や異業種、新興企業からの参入が相次いだからだ。
個別指導のシェアは、06年の学習塾白書、個別指導調査開始以来増え続け、昨年は41.24%まで上昇した。少子化に伴うライフスタイルの変化と共に、教育に対する価値観が変わってきたことが原因だ。更に、ここ数年で一気に増えた小資本で開業できる個別指導FCの台頭もあって、この傾向はしばらく続くものだと思われる。また、小学校への英語授業導入、IT技術によるデジタル教材の進化、学童保育への民間参入など、FC塾展開は個別指導に限ったことではなくなってきた。
本稿では、現在のFC塾市場トレンドを追うとともに、一体いまFC塾業界で何が起きているのか、取材を通して徹底検証したみた。
4つのFC塾モデルと今後の展開
昨年、筆者が行った調査によると、教育サービスのFC展開をしている企業は、学習塾五五社と習い事22社、合わせて77社にのぼる。そのパッケージは、個別指導、学習教室、予備校、幼児教育、英会話、英語教室、PC教室、学童など多岐に及ぶ。そこで、現在ある主なFC塾のモデルを大きく4つのグループに分けて、次図に整理してみた。
昨年から一気に教室数を伸ばしているのは、個別指導のセルモ(法人名:エデュケーションネットワークス㈱、石田信夫代表、大阪市東淀川区)やSSS進学教室(法人名:㈱サンマエデューション、田中健一社長、京都府八幡市)など新規に参入する「新興グループ」で、どの企業もこれまでにない方法で、既存のFCと一線を画すビジネスモデルで展開を進めている。東進衛星予備校(法人名:㈱ナガセ、永瀬昭幸社長、東京都武蔵野市)、トライプラス(法人名:㈱TRGネットワーク、森山真有社長、東京都千代田区)やECCベストワン(法人名:㈱ECC、山口勝美代表、大阪府北区)など、塾以外の業種から参入してくる異業種グループは、自社のコンテンツやノウハウを、巧みに塾用のFCパッケージに切り換えて業界に切り込んできている。
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2011.09.16
2011.10.07
株式会社経営教育研究所 代表取締役
教育ビジネスのアナリスト/コンサルタント。専門はフランチャイズ(FC)とデジタル関連。個別指導FCやベンチャーなどの教育機関を経て、2009年に民間教育シンクタンク経営教育研究所を設立。教育と異業種を結ぶエデュイノベーションLLPパートナー。