消費者の購買行動に与える「文化」の影響が、相応に大きいことは、これまでも指摘してきました。
今後は、日本企業の多くが、これ以上の成長が見込めない日本市場から飛び出し、世界各国の消費者相手としたビジネスを本格展開しなければならない。ですから、各国の文化の特徴を理解することの重要性はますます増していると言えるでしょう。
さて、近代の経済学では、「文化」を基本的に無視してきたことはご存知かと思います。というか、人は経済合理性で行動するものである、すなわち「得か・損か」で判断して行動する、という前提を経済学では置いていましたから、それ以外の要因は、文化も含めほとんど考慮してこなかったのです。
しかし、近代経済学では人間の行動をうまく説明できないことがはっきりしてきました。このため、人間の非合理性にも着目する「経済行動学」の勢いが近年は増してきています。経済行動学でよく売れた本としては、『経済は感情で動く-はじめての行動経済学』などがありますね。
実は、私もまだまだ勉強不足でしたが、行動経済学では、「文化」も重要な要素として取り込み、各種研究が進んでいるのですね。本日(2011/03/09)の日本経済新聞「経済教室」では、行動経済学の枠組みで、「文化の差の影響」についての研究が進められていることが書かれています。
それにしても、そもそも、文化とは何でしょうか?今回は深入りすることは避けたいと思いますが、端的に言えば、特定の国やコミュニティ、組織などにおいて「共有されている「価値観」や「信条」が文化です。
「価値観」とは、何を大切にすべきであり、逆に、何を大切にするべきではないかの判断基準。また、「信条」とは、何を信じるべきか、行なうべきか、逆に、何を信じるべきでないか、行なうべきでないかとの判断基準だと理解すればいいでしょう。
価値観も信条も、ものごとの判断基準ですから、購買行動にも大きな影響を与える可能性が高いのは当然ですよね。
本日の経済教室では、日米のそれぞれの国民の世界観に対する確信度と子育ての厳しさとの関係についての研究が紹介されていました。ここで、「世界観」についての確信度とは、
‘死後の世界がある’
‘神様、仏様がいる’
‘人間は他の生物から進化した’
といった信条に対し、どの程度賛成か、あるいは反対かということです。(ご存知の方もいると思いますが、欧米では、人は神の創造物であり、他の生物から進化したという説は認めない、と強く主張する人々がいます。)
調査の結果では、上記のような信条に対して、明確に賛成・あるいは反対を示す傾向が米国人に強く、日本人は、あまり明確に賛成・反対を示さない人が多いことがわかりました。要するに、日本人は信条があいまいというか、「どちらともいえない」的な人が多いということですね。
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2012.08.15
2012.08.16
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。