1年間に数多くのベンチャー企業が誕生しているが、その多くが名もなき中小企業のままで終わってしまう。その原因はどこにあるのだろうか。ひょっとしたらワンマン社長のそばにいる“ポチ”が、吠えているからかもしれない。 [吉田典史,Business Media 誠]
「3人のポチがいた」「いずれも、ダメダメ君だった」――。
2008年、都内に本社を構える人材コンサルティング会社を取材したとき、30代のコンサルタントたちがこう話していた。“ポチ”とは、クライアント企業の20代後半~30代前半の男性社員たちを指す。彼らは、そこの社長の言いなりになるのだそうだ。
クライアントとは、会社や家庭から清掃などの仕事を請け負うベンチャー企業。創業6年目で正社員は18人、非正社員は160人ほどだった。
多くのベンチャー企業は「売上高10億円の壁」を乗り越えられないが、この会社も4億円前後で伸び悩んでいた(関連記事)。社長は個人事業主からスタートし、3億円前後までは順調だった。10人ほどの社員を引き連れて、軽々と突き進んだ。だが、社員数がそれ以上増えると、業績が伸びなくなった。
そこで営業力のあるマネージャーの社員を採用した。だが、機会あるごとに社長とぶつかり、次々と辞めてしまった。社長は仕切らないと、気がすまない性分。営業マネージャーの仕事を取り上げてしまうのだという。最近は、あるマネージャーが20代の社員を数人引き連れて辞めていくこともあった。
業績は伸び悩み、資金が回っていかなくなり、給与の遅配も起きた。社長はこのような事態に陥り、ようやくこの人材コンサルティング会社に支援を依頼した。そしてコンサルタントらが社員たちにヒアリングをすると、次のような状況が見られた。
* 創業時のメンバーが次々に辞めて、創業経営者が1人になっていた。
* 社員の定着率が悪い。特に20代で1年以内に辞めていく社員が目立つ。
* 社員が報告や連絡、相談をさほどすることなく、バラバラの行動をとる。
* 社員間で仕事のスキルやノウハウの共有ができていない。それに危機感を感じ、統率する人がいない。
* 30代半ばまでの社員の仕事レベルが、同業他社の中堅企業と比べると、3ランクは低い。
要は、安定して売り上げや利益を捻出する仕組みができ上がっていないのである。さらに社長があまりにも自己中心的な性格で、社員らに感情的な言動をとっていることが分かった。
例えば、それぞれの社員の仕事に介入し、「なぜ、こうしないのか」とかき回す。ところが、それにしたがい、仕事を進め、息詰まると「なんとかしろ!」と責任を押し付ける。そこで社員が不満を言うと、「あいつは何様」「使えねえ」などと言って仕事を取り上げたり、ポジションを外したりして辞めるように仕向ける。
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