電子書籍元年と叫ばれた割には手元に届かない電子書籍。「Kindleのない生活は考えられない」という世界はいつになったら訪れるのだろうか。
我々は、Kindleの成功とこのメッセージの意味をもっと深く考えなければならないだろう。
「ググった」だけで、物事を理解したつもりになり、すべてをわかったふうな口をきいたり、思考をやめてしまったりすることが増大してしまったビジネススタイルが定着した今、ベゾスのメッセージの意味は深い。
実際、我々の仕事の中でも、インターネット上の記事をコピペして、クライアントへの提案書や、社内の報告書に仕立ててしまい、それを仕事だと満足してしまうことが増えてしまったことは否定できないし、便利な「情報のつまみぐい」にどっぷりつかってしまってもいる。
ネットや携帯端末が便利で表面的な情報提供を可能にしたのであれば、急速に変化する端末ツールとネットワークシステムを活用することで、単独の著者の力を超えた編集力を持つ出版社は、これからの役割として、「集中して読み」「洞察を提供する」メディア提供者として、次のステージへと昇る責任がある。
出版社側が「出版文化」というならば、その文化とはこうした知識や洞察の提供に他ならないし、また、そうした機能を有するユニットは、プログラマーでもなければ投資家でもないし、ましてやキャリアでもない。
小説にしろ、情報誌にしろ、あるいは写真集、絵画集、哲学書、ビジネス書にしろ、著者、クリエイターは、自らを追求し創りあげた作品を、さまざまな読者(視聴者)により多くの接する機会を持ちたいだけのはず。
また、電子出版時代では、発信側となるプレーヤーはいわゆる著者だけではない。企業や団体、個人でも発信者としてプレーできる。
インターネットが普及し、全員が情報発信者となったと言われたが、電子書籍の普及は、全員がパブリッシャーになれる時代になる。
確実に出版メディアはトランスフォームされている。次世代の出版文化を作るべく、出版社に課された役割は重い。
(初回2011年2月15日掲載)
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