前回、コスト低減のパンドラの箱を開けようという話をした。その翌日、正にそうした事例のニュースが飛び込んできた。三菱重工が、汎用資材の調達を一元化するという。
どうやら調達・購買担当者の性分として、会社トータルで考えるというよりも、「自分は他者のコスト低減の成果を自分のものにしたいが、自分のコスト低減努力、成果を仲間にシェアするのは損だ」と考える方が多いようだ。机上では美しく見える共同購買がなかなか進まないのも、会社をまたぐと、「成果を共有しながら、更に大きな目標に向かって進む」という考え方、文化を共有するのが、ここに挙げた調達・購買担当者の性分にまったく相反する事に起因する。
それでも、三菱重工が10年来進まなかった集中購買の対象品目の拡大に今になって踏み込むのは、単品毎のコスト削減交渉に頼る方法に行き詰まりを感じているか、それだけ経営陣の危機感が強まっているかの何れかと考えられる。
自動車用機器の需要回復などで同社の10年4~9月の上期での連結経常利益は434億円と前年同期より400億円強改善したものの、10年10月~11年3月の下期では、円高ドル安もあり経常赤字を見込んでいる。海外ライバル企業との競争や韓国・中国などの新興国メーカの追い上げも激しくなっており、それが、三菱重工をしてコスト低減のパンドラの箱を空け、これまでの一国一城の文化という聖域にメスを入れる判断をさせたのだろう。
今回の取り組みは、方向性としては正しいものであるから、三菱重工の集中購買を進める方々には、部門の壁や文化的障害があってなかなか進まないと予想されるが、時間が掛かっても是非この取り組みをやりきり、成功させて頂きたい。調達・購買業務が担当者の力量のみでなされるものではなく、組織的な取り組み次第で数十倍、数百倍の効果がでるものであることを証明して頂きたい。
最後に、
経営陣が「まとめて買えば安くなるだろ」という安易な発想でいるようでは、集中購買、特にこうしたMRO、工場資材などといった雑多な材カテゴリの集中購買は決して進まない。集中購買のような複数部門にまたがる取り組みを進める時には、経営者には、必要な人材、情報インフラの確保や社内の抵抗勢力の反対を抑えるなどの支援を行うことを切に望む。
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます