吉野家が筆頭株主である伊藤忠商事が保有する全株を買い取った。「経営の自由度を上げる」「中国などへの進出を加速」などと、日経新聞をはじめとするメディアが伝えるが、具体的にはどのような成長戦略を描いているのかを考察してみる。
「新市場開拓」はもちろん中国事業だ。吉野家は国内市場はもはや規模は追わず、むしろ牛丼のプレミアム化を進めて、社運を賭ける主戦場は中国に置くはずだ。1月18日の日経新聞によれば、海外牛丼店舗は440店舗。ゼンショーの16店舗、松屋の2店舗を大きく突き放している。しかも、そのうち200店舗を中国に集中させている。そして、昨年9月にMSN産経ニュースが報じたところによれば、<9月末までに沿岸部を中心に218店を出店。21年2月期の販売額は約170億円に達した。さらに「2010年代半ばまでに1千店」の計画を掲げ、店舗網の拡大を急ぐ>という。計画は着々と進んでいるというところだろう。
中国という新市場では、狭義での「新商品開発」も自由だ。国内では、「吉野家ブランド」を守るためと、前述の「こだわり」で牛丼をメインに据え、メニューの幅をいたずらに拡張しないことに腐心している。しかし、それが一種の自縄自縛となっている感も否めない。一方、中国ではチキン系や豚系の日本では一般にお目にかかれない多彩なメニューを展開している。「現地化」しているのだ。
「多角化」も好調だ。参加の「はなまるうどん」も中国市場向けメニューや、うどんに入れるラー油をサービスするなど、「現地化」を進め好評を得ている。
吉野家の完全復活に向けた成長戦略の要が、日本国内ではなく中国にあるとすると、吉野家ファンとしては少々寂しくもある。しかし、軸足を移しバックボーンを強固にすることで、「吉野家ブランド」に恥じない品質の牛丼を安定的に国内で提供してくれるのだとすれば、むしろそれは歓迎すべきことなのかもしれない。
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2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。
