家電アプライアンスの発想をITにも (前)

2010.11.29

開発秘話

家電アプライアンスの発想をITにも (前)

根井 和美

企業向けソフトウェア販売/サポートの老舗、アシストが、苦労の末、主力商品サービス、DODAI(ドダイ)を自社開発した。その開発ストーリーから、商品サービス開発の要諦を探る。

■新規ビジネスは失敗の連続

 企業向けソフトウェア販売の老舗、「アシスト」のビジネス領域は、「日本の企業向け、コンピュータ・ソフトウェアの販売およびサポート」ということになっているが、そんなアシストも、ユニクロの柳井社長の「一勝九敗」まではいかないものの、これまで39年間、新規事業を立ち上げては数々の失敗を繰り返してきた。

 例えば、社長のトッテンは日本の伝統的な価値観を好み、ここまでなんとか商売を続けてこられたのは、西洋ではなく日本に会社を設立したからだと言っているが、過去には、輸出部を作り海外進出を試みたこともあるし、韓国にジグアシストという現地法人を設立したこともあった。今では開発は行わないと決めているが、中小企業向け開発を請け負ったこともある。

 また一番大きな損失を出したのは、社長自らが陣頭指揮を取った「パソコンソフト・プロジェクト」である。コンピュータ1人1台を実現するためにはパソコン・ソフトの価格が高すぎると、「アシストカルク」「アシストワード」などの、個人向けパソコン・ソフトを当時の流通価格の約10分の1で提供したのである。当時はパソコン・ソフト市場に「価格破壊」をもたらしたなどと言われて、実際、価格引き下げに貢献することはできたものの、パソコンという未知の分野で経験も浅く、アシスト自体は何億円という赤字を出している。


■新ビジネス・モデルの開発

 そんなアシストが、従来のビジネス領域を超え、ハードウェアも含めた新商材、「データベース基盤ソリューションDODAI」を2007年5月に自社開発し、主力の商品サービスに仕立てた。データの容れ物である「データベース」に適したハードウェアやソフウェア構成/設計を含め、「データベース基盤」に必要なものは、アシスト側ですべて最適に準備しましょうというもの。複雑な組み合わせで初めて使えるようになるITでも、スイッチ1つで使える家電アプライアンスと同様のシンプルな発想がそのコンセプトだ。

 そもそもアプライアンスとは、特定の機能に特化してシンプルに構成したコンピュータのことを意味する。しかしビジネスの現場でITを活用するためには、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークやIT基盤が複雑に絡み合うことは避けて通れない。したがって家電アプライアンスのように機能や構成を絞り込んでシンプルにすることは難しい。その複雑さを意識せずに『パコッと入れるだけ』の手軽さを実感できないだろうか、という視点でサービス設計を行ったのがDODAI商品化プロジェクトを指揮した岸和田隆である。

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