「年収20%アップの転職!」といった魅惑的な広告コピーで若手社員の浮気性はますます膨れあがる。何が根本の議論になるべきか?
【Envisioning Career-scape 第1景 ?5】=======
私はかつて勤めた出版社で、
デザイン雑誌の編集をやっていたころがあります。
中でも、伝統工芸家や職人さんの取材はとても面白かったものです。
取材時に私が毎回、目を引かれたのは、
彼らの手と道具です。
長年の間、力と根気を入れて使った手や指は、
道具に沿うように曲がってしまいます。
また、道具も、彼らの指の形に合うように
すり減って変形してしまいます。
時が経つにつれ、互いが一体感を得るように馴染みあった手と道具は、
それだけで味わい深い誌面用の絵(写真)になります。
真新しい道具が手に馴染まず、なにか違和感がありながらも、
使い込んでいくうちに手に馴染んでいく、
もしくは手が道具に馴染んでいくという関係は、
職と自分との関係にも当てはまると思います。
つまり、最初に出会う雇用組織・職・仕事で、
自分に100%フィットしたものなどありえない。
仕事内容が期待と違っていた、
人間関係が予想以上に難しい、
自分の能力とのマッチング具合がよくないなど、
どこかしらに違和感は生じるものです。
ただ、そうしたときに、職業人としての自分がやらねばならない対応は、
自分の行動傾向をその職・仕事に合うように少し変えてやる、
もしくは自分の能力を継ぎ足したり、改善したりすることです。
または、その職・仕事環境を自分向きに変えてやる、とか
些細な違和感を乗り越えられるよう
雇用組織との間で大きな目的を共有するということも必要です。
ピーター・ドラッカーもこう言っています。
「最初の仕事はくじ引きである。
最初から適した仕事につく確率は高くない。
得るべきところを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年を要する」と。
私は職業人の最も重要な能力の一つは、
「状況対応力/状況創造力」だと思っています。
ドラッカーの言うとおり、
最初の仕事はくじ引きなんだから、
「はずれ」が出ることもあると楽観的に構える。
でもそのはずれは、自分の状況対応、状況創造によって
人為的に「当たり」に変えることができる。
言ってみれば、キャリアづくりとは、
職業選択というくじ引き後の
職と自分の馴染み化(状況創造)のプロセスなのだと思います。
そして結局、その馴染み化をうまくやれるかどうかは、
この連続記事で中心トピックにしてきた
そう、「自律マインド」です。
努めて自律的であろうとする人は、
多少の職場の違和感、不満、不足、不遇をその場で乗り越えていける。
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【1景】”自律”について
2015.07.29
2007.04.10
2015.07.22
2015.07.15
2007.03.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。