近年、キャリアの自律、自律、と叫ばれるようになった。雇用する側も、働く側も、耳とアタマでは「自律的なキャリア形成」を知るようにはなった。けれど、問題はハラでわかったといえているかどうか・・・
【Envisioning Career-scape 第1景 -1】=======
いつからかニッポンの会社は、従業員に対して「自律的な」キャリアを形成していきましょうと声高に呼びかけるようになった。
「みなさんはもう立派な大人ですから、自由と自己責任でたくましくキャリアを拓いていってください。会社はそのために、スキル研修もやりますし、自己研鑽費も補助します。キャリアカウンセラーをつけて相談にも応じます」と。
他方、雇用される従業員たちの側は、「そうかこれは会社の実質的な終身雇用打ち止め宣言なのだ」と一瞬に悟った。
それを受けて、多くの働き手は、「これからはスキルや専門知識が大事だ、資格も取っておかねばと危機感を持った。いや、まぁ、それでも、この会社でうまくいかなければ、転職紹介会社に駆け込めば、なんとか移れる先もあるだろう」・・・。
・・・少し意地悪な表現をして雇用側と労働側の意識を書きましたが、いずれにしても、キャリアの「自律的」形成は、雇う側にとっても、働く側にとっても、もっとも基本的でますます大きな問題となりつつあります。
ですが、「自律的なキャリア」は、言葉のみが一人歩きを始めて、あまりその中身が深く認識されていないのが現状であるとも思います。
・なにをもって「自律的」というのか?
・「自立」とはどう違うのか?
・「自律」は善で、「他律」は悪なのか?
・「自律心」は教えたり、育んだりできるのか?
・「自律的な個」が増えることで、個と組織との関係性はどう変わるか?
こうした問いに対して、雇用組織も働き手も明快な答え(自分なりの意志を含んだ解釈やそしゃくイメージといってもいい)を持たないまま、やれ研修制度の見直しだ、キャリア支援制度の拡充だ、エンプロイヤビリティが大事だ、社外労働市場での価値意識を持とう・・・などと、手段や方策に多忙であるふうにみえる。
こうしたことから、ここでは今回から数回にわたって、「自律」ということにつき触れてみたいと思う。
さて、まず、雇用側が「自律」をどう定義づけているでしょうか。
経団連(日本経済団体連合会)が06年6月に発表した提言『主体的なキャリア形成の必要性と支援のあり方』によれば、「自律型人材」とは、
・今までの慣習にとらわれず、
・問題の本質をつかんだ上で、迅速に行動し、価値創造、事業革新を図ることができる。
・また、与えられた仕事を最後までやり遂げ、
・さらに自らの付加価値として期待以上の成果を上げることができる。
としています。
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【1景】”自律”について
2015.07.29
2007.04.10
2015.07.22
2015.07.15
2007.03.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。