10日・日経新聞朝刊に「大学発VB経営厳しく・55%が経常赤字」という記事が掲載された。 初期段階ではファンドの未整備などの問題もあり、多産多死の観が否めなかったが、 今日、ベンチャービジネスは事業のありようとして確たる地位を築いている。 大学発のベンチャーのどこに弱点があるのか検証してみたい。
筆者も実は、前職で親会社に資本を出してもらった子会社の設立に参画したが、あえなく1年未満で清算の憂き目をみている。
また、独立してからも大学発のベンチャーに一部参画したが、はかばかしい成果は得られなかった経験もある。
その経験に基づき、非常勤講師を務める大学では「ベンチャービジネスとマーケティング」という講義を受け持っている。
大学発ベンチャーは色々な意味で他人事ではない。
記事によると<政府が2001年に千社育成計画を打ち出した大学発ベンチャーの数は1500社を超えたが、社員や営業ノウハウの不足から事業を採算に乗せられない姿が浮き彫りになった>とある。
さらに日経リサーチの調査結果を挙げ、<経営課題では64.3%が「社員不足」、39.5%が「販路確保が難しい」と回答。大学発技術を基に製品化にこぎつけながら、人員や営業ノウハウ不足が障害になっている企業が多い。>と分析している。
さて、ベンチャービジネスに限らないが、企業が永続的に利益を創出し、存続していくためには、いわゆる”ビジネスモデル”がしっかりしていることが必要だ。
一時期、流行語ともなったこの”ビジネスモデル”という言葉を少し要素分解していく。
以前、キーエンスのビジネスモデルを分析した記事でも紹介した、以下の3つのポイントに従い、大学発ベンチャーの検証をしてみよう。
・「ストラテジー・モデル」
模倣困難なユニークな戦略性があること。
間違ってはいけないのが、ストラテジーとはちょっとした思いつきレベルのアイディアではないことだ。
例えば、まだ誰も手を付けていない新たな領域のビジネス。
いわゆる”ブルーオーシャン”の状態だ。
しかし、そんな都合の良い状況などめったにないので、いわゆる”レッドオーシャン(消耗戦)”を戦い抜ける徹底した合理化策なども立派な戦略になる。
つまり、「これなら絶対に勝てる」というKSF(Key Success Factor)が確保されていることが肝要だ。
大学発のベンチャーを一括りにして考えることは避けねばならないだろうが、しかし、多くのケースではこの部分はクリアしているのではないだろうか。
・「オペレーション・モデル」
戦略優位が保て、持続可能なしくみがあること。
企業には永続性が求められる。
どんなにいい戦略が描けても、それが永続的に運営可能でなければ意味がない。
多くの場合、社員に負担がかかりすぎたり、稼働を確保できないなどの問題で破綻をきたす部分だ。
まさに日経リサーチの調べにある「社員不足」などはこの問題の典型だろう。
また、恐らく主要メンバーが、ベンチャービジネスと大学での研究の稼働調整がうまくできないなどの問題も抱えているのではないだろうか。
筆者がかつて清算した会社は、親会社から多くのスタッフを兼任で使おうとした結果、やはり稼働調整ができずに破綻した。
同じような問題があるのではと推察できる。
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2007.10.16
2007.10.20
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。