事業会社の苦労を知らないエリート達の手で、経済、サプライチェーンを非効率化、非活性化、イノベーションを阻害するような規格の検討が地球環境保護の美名の下、水面下で進んでいる。 小さいながらも事業を営む人間の一人として、そんなまやかし、愚行にはNoと言わざるを得ない。
ISOでは温室効果ガスマネジメント分科委員会(TC207のSC7)において、製品のカーボンフットプリント規格ISO14067と企業のカーボンフットプリント規格ISO14069の策定が進められている。別の温暖化ガス算定基準組織であるGHGプロトコルイニシアティブは、スコープ3だけではなく、製品のカーボンフットプリントに相当する「製品のライフサイクル会計報告(Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard)」に関する規格も同時並行で策定を進めており、年内にも完成予定という。(参考:同上)
これらは、一体、誰の何のための規格だろう。そもそも温室効果ガスと地球温暖化の関係は未だに科学的論争が終結していない。また、温室効果ガスの測定は、現時点では、最終顧客からあまり価値を認めてもらえず、価値を生まない活動といえる。幾ら監査法人、審査・認証機関、コンサルティング会社が高い審査料、認証料を取ろうとも、サプライチェーン上では何の価値も生んでいない。これでは、スコープ3であろうと、カーボンフットプリントであろうと、単に監査法人、関連審査・認証機関、コンサルタントを儲けさせるためだけのものだ。
スコープ3を議論するISO 14067作業部会の参加者は、監査法人やコンサルタント、NGOなどが圧倒的に多く、事業会社からの参加が少ない。GHGプロトコルイニシアティブの幹事メンバーも企業を代表する委員が1名だけで、残りの14名はそれ以外の所から委員が出ている。(参考:同上)仮にこうした場に事業会社からの参加が増えたとしても、かなり上のクラスからの参加になると予想され、結局、現場の測定の苦労などあまり分からないまま議論が進められることになるだろう。だから、何の価値も生まない非現実な活動に膨大なコストをかけるような規制がまかり通ってしまう。
こうした動きにより懸念されるのが、サプライチェーンの固定化による非効率化、非活性化、イノベーションの阻害だ。測定の苦労、コストを考えると、取引先どころか、原料一つ、ねじひとつ変えられないということになりかねない。これでは、イノベーションの採用どころか、既存製品の改良すらままならない。
客先認定と呼ばれる慣行がこうした動きを加速させる。客先認定とは、買い手企業の品質管理上、サプライヤが設備、材料・部品やそれらのサプライヤ、作業方法などの変更をする時には、買い手企業の承認を得るというもの。客先認定が取れなければ、幾ら改善効果が見込まれようとも、サプライヤは変更ができない。当然、何も変えなければ、何の改善も行えない。それで売価を下げろというのは単に「利益を削れ」「赤字でも仕事をしろ」と言っているのであって、無理な要求だ。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます