「高品質なら高価格で売れる」という従来の常識が通用しない無料経済(フリー)が、インターネットを支配している。有料で売れない理由は、「価格が高いか安いか判断が付かない」と消費者を迷わせる心理的負担にある。仮想アイテムに、心理的ハードルを越えて買ってもらえる価格を付けるにはどうしたらいいだろうか。Zyngaの『Caf? World』や『Treasure Isle』から、その方法を学ぶ。 [野島美保,Business Media 誠]
Zyngaが運営するゲームの有料アイテム
アイテム課金のゲーム経験がある方はご存じのように、すべてのアイテムが有料販売されているわけではなく、無料で利用できるアイテムも案外と多く用意されているものだ。むしろ、有料アイテムの点数の方が少ないゲームもあるが、それでも豊富な無料アイテムでは飽き足らず、有料アイテムが欲しくなるのはなぜだろうか。
このところ筆者は、米国SNSのFacebookに展開されているソーシャルゲームをプレイしていたが、有料と無料の区分けという点について、Zyngaが秀でていると感じた。
Zyngaの『Café World』(月間アクティブユーザー7570万3716人、8月13日時点)は、カフェ経営をシミュレーションする人気アプリである。レストラン・カフェ系アプリには、Playfishの『Restaurant City』(月間アクティブユーザー2220万1975人、8月13日時点)を先発として、そのほかにも類似アプリがあるが、なぜか筆者は『Café World』にはまっていった。
例えば、『Restaurant City』は、複数の食材を調達して前菜とメインを組み合わせるといった、高いゲーム性が魅力だ。それに対して、後発の『Café World』は、レシピは単品であるし料理工程も3クリックだけと、ユーザーが操作できるゲーム要素が簡略化されている。それでもついアクセスしてしまう理由は、ゲーム展開のテンポの良さと、アイテムの有料無料のマネジメントにあると分析した。
ひと言で言うならば、「引っ掛からない感じ」なのである。ソーシャルゲームの場合、軽い気持ちや友達に誘われてプレイを始めることが多い。その時に、チュートリアル(入門編)が難しいなど、初回アクセスから「引っ掛かる」とそこで断念してしまう。往々にして、ゲームを進めていけば自然に分かることなのに、すべて最初に伝えようと字数ばかり多いチュートリアルがみられる。逆に、分かりやすくても、奥行きが感じられず、先行きが容易に想像できてしまうのも問題だ。こうしたユーザー心理とはお構いなしに、序盤から有料アイテムばかりアピールしていれば、気持ちは離れてしまう。
ここがコアユーザー向けのゲームと違うところだ。ゲームに貪欲ではないユーザーに対して、未知の楽しさを、分かりやすく短い時間でプレゼンすることが最大の課題になる。
『Café World』では、チュートリアルに沿ってプレイしていると、テーブルの配置によって客の動きが変わってくるのに気付く。そのうち、どうしたらカフェのオペレーションが効率的になるか、自分でも試行錯誤して楽しむようになる。筆者の場合、画面上に表示される来客数を最大値にすることを、とりあえずの目標にした。
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