再生可能エネルギーの主力として注目されている風力発電。陸地だけではなく海上でも建設が行われているが、さまざまな問題が浮き彫りになってきている。 [松田雅央,Business Media 誠]
出力5メガワット、塔の高さ90メートル、直径126メートルの巨大な風車が洋上に林立する風景。これが将来の電力供給を担う「洋上ウィンドファーム」の姿だ。
再生可能エネルギーの主力と目される風力発電だが、陸上に適地を見つけることはすでに難しく、特に大規模なウィンドファームを建設できる場所はドイツ国内に残されていない。そこで注目されるのが洋上だ。すでに技術的な問題はクリアしており、経済性と環境保全のバランスを考慮しながら欧州各地で本格的な開発が進んでいる。
今回の時事日想はこの春正式に稼働を始めたドイツ初の大型洋上ウィンドファーム「アルファ・ベントス(alpha ventus)」をレポートする。
2050年までにCO2排出「0」
アルファ・ベントスは株式会社イー・ヴェー・イー(EWE:エネルギー施設の管理会社 )、有限会社エー・オン(E.ON Energy Projects GmbH:エネルギー・コンツェルン)、有限会社バッテンファール(Vattenfall Europe Windkraft GmbH:エネルギー・コンツェルン)が国の支援を受けながら取り組んでいるプロジェクトだ。1999年に運営会社が設立され、2008年に工事着工、そして2010年4月27日に稼働を開始した。ドイツ本土から45キロ離れた北海洋上に出力5メガワットの風車が計12本建設され総出力は60メガワット、建設費は2億5000万ユーロに上る。
出資者だけでなくドイツ政府にとってもこのプロジェクトの持つ意味は大きい。
「風力の利用は将来のエネルギーミックス政策において中心的な役割を果たすものであり、洋上風力発電はその大きな部分を担うことになります。 2030年までに洋上発電能力を2万5000メガワットまで高めることが目標です。アルファ・ベントスは始まりであり、未来へと通じる再生可能エネルギー開発の扉を開きました。出資者、施設管理者、経営者はパイオニアとして高いリスクを負い、その粘り強さと創造性は今後に繋がるはずです。アルファ・ベントスの建設で培われた経験は今後建設される洋上ウィンドファームに貢献するでしょう」(ドイツ環境相Dr. Brinker)。「2050年までに発電に伴うCO2排出をゼロにする」というドイツ政府の目標は大型洋上ウィンドファームを抜きに語れない。
世界最大級
アルファ・ベントスが建設された沖合い45キロの水深はおよそ30メートル。風車はそこにオイル掘削プラットフォームの技術を用いて4本足の「やぐら」を建てるか、非常に重い3本足の土台を設置し、その上に据え付けられている。
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