弊社では、この度、日本の調達・購買業務の現状と課題を明らかにする調査を行い、結果を「2010年ストラテジックソーシングベンチマーキング調査結果」として先週発表しました。 調査結果につきましては、発表資料をご覧になって頂ければと存じますが、今回は、この調査から得られた日本の調達・購買をめぐる最大の問題をえぐり出します。
■取組み不足が目立つのはITや重要だけれども難しいテーマ
「調達・購買部門の生産性の管理」の他に、回答各社のスコアが低かった項目は「eRFx、リバースオークション、カテゴリソーシングツール」「契約管理ツール」といったIT・ツールの活用に関る項目です。これらのは平均スコアは2に至りませんでした。
企業毎のバラツキが大きい項目には、「ワークフロー、カタログ購買」「コスト低減機会分析、支出管理ツール」「EDI」のすべてIT・ツールの活用に関る項目が上位3項目となりました。次いで、企業毎のバラツキが大きい項目には、「組織目標の設定とそれらの経営方針・戦略とのリンク」「調達・購買部門の生産性の管理」「調達組織と社内ステークホルダーとの関係」のトップマネジメントや事業戦略と調達・購買機能の整合を問うものや、「サプライヤ選定基準」「仕様の明確化と精度、品質管理」「サプライヤとの適正な関係」といった担当者に任せがちで組織だって取り組むのが難しいもの、「環境負荷低減とグリーン調達」「集中購買とカテゴリーソーシング」といった重要だけれども難しいテーマのものが並びました。
IT・ツールの活用にしても、トップマネジメントや事業戦略と調達・購買機能の整合にしても、組織だって取り組まなければならないものにしても、調達・購買担当者や部門だけが頑張っても限界があるものばかりです。
これらが、経営者、マネジメントに調達・購買業務の本質、重要性が理解されていないため、組織の調達・購買機能が本当に果たさなければならない役割が部門に対して示されていないと結論づけた理由です。
経営者が、部門や担当者に本当に果たさなければならない役割が示せていないということは、部門や担当者に対して、適切な期待を持てていないということです。根拠もなく「コスト削減を半減せよ」と結果だけ求めるのは、期待ではなく、無責任です。いや無責任どころか、根拠のない無謀な結果だけの要求は、現場や担当者の意欲をそぐといった意味から害悪ですらあります。
必要な人員やIT・ツールへの投資がなければ、それに見合った成果しか上げられません。単なるコストセンターと捉えられ、頭数や人件費総額のみで管理され、
個々の仕事の質や成果を問われず、必要な人員やツールも割当てられなくて、どうしてそうした担当者や部門が仕事に意欲を持って取り組み、成果を挙げ、育っていくでしょうか?
幾ら個人が頑張っても、一人の力には限界があります。だからこそ、事業は、組織、企業で行なうのです。しかも、調達・購買業務は、開発、設計、ユーザー部門などの要求元や製造などのオペレーション部門との間をつなぐ横串機能の業務です。黙っていても大きな成果を上げるスーパーバイヤー、カリスマバイヤーの登場を待つというのでは、経営、マネジメントとはいえません。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます