部下は決して上司を説き伏せてやろうとか、考えを改めさせてやろうなどと挑んではいけません。賢い部下は「聞く」ことで上司を結果的に動かすのです。
これら観察を行うのは、上司に媚びたり、妥協をするためのものではありません。上司の波長に近い形でコミュニケーションを行うことで、自分をより受け入れてもらいやすくするためのものなのです。
◆読解力は上司のあいまいな点と点をつなぐこと
上司の発言や行動の中には、いろいろな信号やヒントが隠れています。上司と真っ向から対立して、自分の意見を押し通すというのは、譲れない一大事のときは別にして、できるだけ避けたいものです。
したがって、日ごろ多くの業務の中では、上司のベクトル(意思の力と方向)を利用しながら、自分の思うベクトルに近づける形で着地するほうが現実策です。そのために、上司を「読み解く」力が求められます。これも上司へのチューニングのひとつですが、先の観察に比べ、もう一歩踏み込んで神経と頭を使わなければなりません。具体的には、
・上司の発言の中に説得点・着地点を見出す
・上司の命令の行間を読む
・上司の判断を推測する
・上司の行動を先回りして考える
上司とて管理・監督の神様ではありません。自分の担当事業について、どんな選択がありうるのか、またどの選択肢が正解値なのかが明確にわかっていないときも多いのです。
部下の前で話したり、命令したりするときも、実は自分でもあいまいなまま口に出していることがあります。そんなときの上司の心境はどうかといえば、「俺はこの方向で何とかいきたいと思っている。が、まだ確信はない。この意をくみとって、部下たちから何か妙案が出てくればいいのだが……」です。
上司という生き物は勝手なもので、自分はおぼろげながらでも「点」を言えばいい、その後、その点をクリアにして、「線」でつないで持ってくるのが部下の仕事だと思っています。そして実際、上司から信頼を受ける有能な部下とは、それをこなす人なのです。
◆設問力で上司と本質を共有する
聞くことにおいて、もっとも難しいのが「問いを立てる」ということです。ここでいう「問い」とは漫然と質問をすることや、日常業務の作業について事細かに指示を仰ぐ、確認するということではありません。
現在進行している担当事業について、自分なりの観察や読解を経て、なんらかの仮説を立て、結論を固めるために、その本質を問うという行為をいいます。具体的には例えば、
・その事業、そのプロジェクト、そのアクションの目的を問いなおす
・WHY(なぜそうなのか)を共有する
・優先順位を確認する
・リスクを洗い出す
・方法論、手段の選択肢を提案する
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【賢い部下ほど上司を活かす】
2010.05.22
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。