スポーツウェアメーカのゴールドウインが、エコ通勤の促進を目的に、自転車を正式な通勤手段として認める社内制度を始めました。 経営・マーケティングの両面から、非常に好ましい取組みです。 今回は、本業と関係のない上っ面のCSR活動に比べ、この取組みのどこが異なっているのかを見ていきます。
こうした反動を考えると、幾ら世の中のためになることであっても、中途半端な活動ならばやめた方がよく、やるなら徹底してやる、徹底してやる覚悟がない、できないならばやらないとはっきりさせた方が、経営にとっては効果的です。
そうした意味では、自転車および自転車関連用品ブランドを持つゴールドウィンがこうした取組みを行なうというのは、説明が付きやすく、お客様や従業員にとっても、ストンと腑に落ちます。
逆に、意外だったのは、同社によると、ゴールドウインによると、この制度はスポーツ業界初とのことです!
その理由は、実は、この取組みは、導入する企業にとっては乗り越えなければならないハードルが高いものだからかもしれません。まず、この制度を利用している社員が事故を起こしたり、飲酒運転で捕まるといったことが懸念されます。また、会社に着いた後、勤務中の自転車の保管。自社の前に自転車が並び、一般の方々の通行に迷惑を掛けてしまったら、よいことをしているつもりが、独善になってしまいます。細かい話ですが、雨や雪、もしくは強風など自転車での通勤が困難な時に、この制度を利用している社員は、それでも自転車で通勤しなければならないのか、そういった日は電車など他の公共交通手段に切り替えると、自腹を切らなければならないのかといった問題があります。
同社では、こうした課題に対し、飲酒運転や過労運転など7つの禁止事項を明確に定め、ヘルメットやグローブの着用、任意保険の加入の義務づけなど、制度利用者の安全や他の通行者への迷惑が生じないよう配慮しています。勤務中の駐輪の問題については、本社ビルの地下1階に駐輪場を用意しました。自転車通勤者にも、通勤距離に応じた通勤手当を支給されるので、悪天候の中や付き合いで飲酒の予定がある時などは、無理をせず、代替の交通手段を利用できます。
よく考えると、ここで懸念されている問題は、制度がなくても、実際には起こりうる問題です。それを社員の自己責任とするより、会社として受け皿をしっかりと用意し、そうした事態を未然に防ぐ方が、経営としてより優れているのは明らかです。
恐らく、こうして制度化して、制度利用者を会社の顔として立てた方が、制度利用者にも強い自覚が生まれ、より責任のある行動を取り、問題の起こる確率は大きく減ることでしょう。
駅前や繁華街で所狭しと並んでいる駐輪自転車、歩道を我が物顔で走る自転車、歩道を避けて走ろうとすれば、車道を走らなければならない道路環境、こうした現状を見ると、環境負荷を低減として人気が増えている自転車ですが、日本ではそうした自転車の利用が文化として社会に定着しているとは言えません。事故や運転マナーの問題を恐れて、問題から目を背けるより、そうした問題に正面から取組み、自転車文化を築いていくという同社の姿勢は、自転車用品ブランドメーカとして、非常に好ましいものです。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます