過去最悪!『鉄道自殺年間647件』が道連れにしているもの!

2010.05.05

ライフ・ソーシャル

過去最悪!『鉄道自殺年間647件』が道連れにしているもの!

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

「○○駅で発生した人身事故の影響で△△線は一時運転見合わせております」こんなアナウンスは、日常茶飯事である。 黄金週間の中日である昨日も、上下計5本が運休、約3万5000人に影響する新宿駅での人身事故がニュースになっていた。

このように、鉄道自殺は・・・他人を大量に巻き込む。
特に首都圏では、その数が半端ではない。言い換えると、他人を巻き込む数が多い路線ほど、鉄道自殺の場として選択されていることになる。さらに、死体は原型をとどめず、その遺体処理に当たる乗務員や、その様子を目の当たりにした乗客の心のトラウマになることが指摘されている。

『他人に迷惑をかけるという率』は、他の自殺手段とは比にならないほど、高いのだ。

では、なぜ、こんなに迷惑をかける自殺手段を選択するのか。一連の記事の中で、江口昇勇(のりお)・愛知学院大教授(臨床心理学)は、多方面に影響を与える鉄道自殺を選ぶ背景には、「自分の存在を何とか知ってもらいたい」との思いがあるのではないか。と指摘されている。

本当に、そうなのだろうか?「自分が飛び込むことによって他人に迷惑をかけてしまう」、「親が鉄道事業者から賠償請求をされてしまう」、「自分の遺体を見た家族が悲しむ」なんて考えずに、「これに飛び込めば自分は死ねる」ということしか考えていないのが本当のところだろう・・・。

「これに飛び込めば一瞬で済むから苦痛も感じない。」その衝動的な選択動機よりも、、、、「最期に自己を多くの他人に認めてもらいたい」「いま動いている社会を道連れにしたい」動機が上回っていると考えるのは、自殺をするまでに至らない我々社会の側の勝手な推測であり、傲慢である。鉄道自殺の衝動を多くの人が責める背景は、ここにある。

自殺は、当然、社会にあまり報道されない。しかし、鉄道自殺は、、、ニュースになる確率が高い。さらに、「○○駅で発生した人身事故の影響で△△線は一時運転見合わせております」というアナウンスは、首都圏を利用する人達の耳に、毎日1回の頻度で届いているわけである。いちばん身近で、いちばん多く耳に届く自殺が、鉄道自殺なのである。そのニュースやアナウンスを聞く度に、人々の心の中に「迷惑がかかっている=道連れ的感情」が湧く。無意識に、社会に対する「怨嗟の輪廻」を巻き起こしている。

私達は、「30㎝前へ踏み出すことにより死ぬことができる日常がある」社会に生きているのである。

いつ、その衝動が自分の中に沸き起こるかわからない。そのことへの想像も無しに、鉄道自殺のニュースを迷惑だと聞き流す社会が築かれることの方が怖い。

鉄道自殺者が道連れにしているのは、日本人の「日常に牙を剥いている死」への想像力である。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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