上司に対する「べき・はず」が強ければ強いほど、部下のストレスは強まる。上司をコントロールすることは難しいが、自分の「べき・はず」論ならコントロールできる。そこに対上司ストレス軽減の鍵がある。
私たちは、何か自分の身に降りかかった出来事に対し、
「よかった」とか「悔しい」とか感情を持ちます。
ですから私たちは単純に、この場合の因果関係をA→Cであるかのように思いがちです。
ところが実際は、その感情〈C〉を引き起こしているのは、
出来事〈A〉ではなく、
その出来事をどういった信念や思い込み〈B〉で受け止めたかによる
というのがこの理論の軸です。
すなわち、因果関係はA→B→Cと表されます。
例えば、ある職場の同僚2人が昼食のためにある定食屋を訪れたとします。
2人は同じメニューを注文して待っていたところ、店員が間違った品を持ってきました。
そのとき、一人は
「オーダーと違うじゃないか。いますぐ作りなおして持ってきてくれ」と、
厳しく当たる反応をしました。
一方、別の一人は
「まぁ、昼食の混雑時だし間違いも時にはあるさ。
店員がまだ慣れてないのかもしれないし。時間もないからそのメニューでいいよ」と、
穏やかな反応をしました。
このように同じ出来事に対し、
結果として二人の持つ感情、そして対応がまったく異なったのは、
それぞれが持つ信念・思い込みの差であるといえます。
すなわち、一人は「客サービスとは、決して客の期待を裏切ってはいけない。
飲食サービスにおいて注文品を間違えるなどというのは致命的なミスである」
という信念を持っているがゆえに、あのような対応が生じました。
他方、もう一人は「混雑するサービス現場では取り違えや勘違いは起こるものである。
おなかが満たされれば、メニューにあまりこだわらない」
という信念で受け止めたために、あのような対応になりました。
◆自分の「べき・はず」論をどうコントロールするか
このことは、
私たちは身に降りかかってくる出来事を100%コントロールすることはできなくても、
それを受け止める信念や思い込みをコントロールすることによって、
結果的に生じる感情や対応を、自分の負担の少ないほうに緩和できたり、
自分のプラスになる方向へ誘導できたりすることを示しています。
上司との人間関係で言えば、
部下は上司の人間改造をそうそう簡単にはできませんが、
部下側が心持ちを変えることによって、対上司ストレスを軽減できるということです。
具体的には、次のようなことを留意するといいでしょう。
・過剰に受身的で従順な受け止めをして、自己犠牲しない
・過剰に攻撃的で利己的な思い込みを緩和する
・自分の「べき・はず」論に“遊び”(多少の余裕幅)を持たせる
・自分の主張を上司に100%「説得」しようと考えるのではなく、
70%でもいいから「納得」してもらえればいいやと構える
・主語を「WE」(=自分のいる組織)にして考え、語る
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【賢い部下ほど上司を活かす】
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。