テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」でも取り上げられたツイッター企業、ザッポスのCEO、トニー・シェイは、「利益ではなく、情熱を追え!」の熱いメッセージを、世界の起業家たちに向けて送っている。そのトニーに、「お金があるから、情熱を追えるんじゃないの?」という質問にどう答えるか、訊いてみた。
ザッポスCEO、トニー・シェイに、6月に発売予定の彼の本、『Delivering Happiness(幸せを届ける会社)』について訊いてみました。インタビュー報告の第三回は、「会社経営における利益、情熱、意義の関係性」について、そして、「ザッポス初期の失敗」について、トニーに語ってもらいます。括弧内には、インタビューの最中やインタビュー後に思いついた私のコメントを書いてみました。
石塚:
『Delivering Happiness』のプロモ用ビデオの中に、「利益(お金)があれば幸せになれるというものではない」という言葉が出てきます。確かにそうだと思う反面、ビジネスというのは、「利益」がなくては存続していくことができませんよね。また、「利益(お金)があるからこそ、情熱を追うことができる」とも言えると思います。例えば、あなたのケースだと、ザッポスの前にリンクエクスチェンジという会社を立てて、そこから十分なお金を得たからこそ、ザッポスという会社で、自分の理想を実現することができているのじゃないか、と言う人もいると思うのですが、そういった質問に対してはどう答えますか。
トニー・シェイ:
『Delivering Happiness』の副題は、『A Path to Profits, Passion, and Purpose(利益と、情熱と、そして意義への道のり)』です。つまり、僕が主張したいのは、最高のビジネスとは、この三つの要素をすべて揃えたビジネスだということです。情熱を追うだけでもだめだし、意義を追うだけでもだめで、利益を確保する方法を考えなくてはなりません。生きていくためには、利益も必要ですから。
利益を空気に例えたらわかりやすいかもしれません。もし空気がなかったら、当然、死んでしまいますよね。でも、息をするのに十分な空気があれば、それ以上の空気はいりません。余分に空気があったところで、幸せになれるわけでもなければ、長生きできるわけでもない。そうでしょう。ビジネスにとっても同じことで、息をする、つまり、会社が存続したり、働いている人が生きていくのに必要なだけの利益を確保できた、というステージにおいては、情熱や意義が、利益よりもっと重要になる、と、そういうことなんです。
石塚:
『ザッポスの奇跡』では、主に、ザッポスの成功譚を書いているのですが、日本の読者の中には、「ザッポスを今の形につくりあげるまでに経験した躓きや失敗について知りたい」という声が多くあります。ザッポスの今までの歩みの中で、「こんな失敗があった」ということがあれば、聞かせてもらいたいと思うのですが・・・。
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インタビュー
2010.04.27
2010.04.22
2010.04.20
2010.04.15
2010.04.13
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。