国内最大規模の求職者データベースを持つエン・ジャパン。転職サービスをメイン事業としながらも、求職者には安易な転職を勧めず、求人企業に対しても慎重な採用を求める。ともすると自社の利益と矛盾しかねないポリシーの背景に秘められた同社の哲学を探る。
それでは自社の存在価値が損なわれる。そう考えるのがエン・ジャパン流でなのだ。
「国が繁栄するためには、企業が強くなることが必要。企業が強くなるためには、事業目的にフィットした人材が欠かせない。この軸がぶれることはありませんね」
■人を育てる。人を巡り合わせる
「さすがにリーマン・ショックの影響は甚大でした。市場環境の激変ぶりから、まさに非連続的な変化が起こったのだと認識しています」
業績が悪化した企業は軒並み、人員カットにかかる。当然、中途採用ニーズも一挙にしぼむ。
「景気循環の波は以前から何度もあったわけですが、今回のようなラディカルな変化は循環などという生やさしい言葉では語れません。当社でも前年対比で売上がほぼ半減しました。これまでの常識ではあり得ない現象が、現実に起こっているわけです。様変わりした状況を謙虚に受け入れ、次の一手を考える必要があります」
日本は極めて厳しい状況におかれている。理由は大きく二つあり、一つは雇用のグローバル化だ。ICTの発達により、例えばコールセンターを中国など海外に設置する企業が増えている。日本国内を対象としたコールセンターであっても、中国に置く方がトータルコストを抑えられるからだ。
「少なくとも電話をかけたり受けたりするだけの業務については今後、日本の労働者は中国の方々と天秤にかけられることになります。プログラミングをインドなどでオフショア開発するやり方も、常態化してきました」
そうした状態に追い打ちをかけるのが、ゆとり教育や核家族化が引き起こした人材の質の低下だろう。
「人材の質に関しても残念ながら、日本の労働者が世界と比べてダントツに高いとはもはや言い切れなくなってきました。傾向として競争心に欠ける人が増えているように思えます」
由々しき問題である。そこで同社は、人材の質を高めるために新しく「[en]カレッジ」サービスを立ち上げた。中小企業を対象に、さまざまな研修・セミナーを提供するサービスだ。
「大企業なら研修を担当する部署がありますが、中小にそんな余裕はありません。誰か一人でも研修で抜けたりすれば、それだけ売上が減るような環境です。とはいえ人材の質を高めなければ勝負にならない」
さまざまな研修メニューを提供し、定額制で学ぶ機会を多く提供するため「[en]カレッジ」は開催されている。同社はほかにも結婚式場情報サイトサービスなど「縁(en)」をキーワードに、さまざまなサービスを立ち上げつつある。提供するサービスにはすべて共通の哲学がバックボーンとしてある。個人がよりよく生き、企業がより力強く活動し、日本という国が強くなること。この哲学がぶれることだけはあり得ないのだ。
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FMO第32弾【エン・ジャパン株式会社】
2010.04.08
2010.04.01
2010.03.25
2010.03.18