ユーザーとメーカーが協働でマス商品を企画・開発する。ありそうでなかった仕組みが『マス・コラボレーションモデル』。F1層を中心としたユーザーの感性とメーカーの技術力をネット上で融合し、モノづくりに活用する。新しいプラットフォームを目指すアゲハのモデルに迫る。
「湘南藤沢キャンパスとの出会いは、頭をがつんとやられたようなショッキングな出来事でした。ちょうど知的な欲求不満状態だったこともあって、こんなに自由に学べるところが世の中にあるんだって感激したんです。自分の問題意識に基づいてあらゆる学問分野を統合し、自由にカリキュラムを組んで学ぶことができる。初めて、自分の悩みを理解し、認めてもらえた気がしました。それまでは大学に入る目的意識を見出せずにいましたが、ここなら自分らしく社会に貢献する道を、もう一度模索できるかもしれない。迷いや怖れもありましたが、その可能性に賭けてみることにしたんです」
思い込んだら命がけである。わずか3ヶ月足らずではあるが、すさまじいまでの猛勉強の末、見事、合格を勝ち取ったのだ。
■学内ビジネスコンテストでの優勝が契機に
「大げさかもしれませんが、SFC入学は私にとっての文明開化でしたね。学部時代には脇目もふらず、勉強しました。それは、ある特定の目的のために自分を律してやるような勉強ではなく、まさに『世界観を作っている』実感を伴うもので、楽しくて仕方がなかったのです。そのうちネット上でのコンテンツ流通のあり方が大きく変わってきていることに興味を持ち始めたのです」
Web2.0あるいはCGMといった流れが表面化してきたタイミングである。ネット上に既にあるコンテンツに編集・改編などの二次制作、三次制作を加えることで新たなコンテンツが次々と生まれる。まさにネットのダイナミズムが爆発し始めている時期だったのだ。
「ユーザー間のコラボレーションで新しい価値がどんどん創り出されていく。これはすごいことだと興奮しながら研究にどっぷり浸かっていたある日、突然これをファッションアイテムに応用できないかと閃いた。アゲハの原型です。みんながファッションを通して自由に自己表現ができるように、個人をエンパワメントしながら、全体としての価値も高められるようなモデルが作れないかと」
もちろん最初はJust an Idea、単なる思いつきに過ぎない。しかし、時の女神が味方した。このアイデアに可能性を認めたゼミの指導教官が、別名「大学内ビジネススクール」と異名をとる伊藤良二教授だったのだ。
「先生にサポートしてもらい、半年かけてアイデアをブラッシュアップしていきました。ゼミで発表したら、これはいける、ビジネスとして成立するよ、誰かやらないのって高く評価されたんです。その瞬間、起業が現実的な選択肢となりました」
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FMO第31弾【株式会社アゲハ】
2010.02.12
2010.02.04
2010.01.28
2015.01.21