ユーザーとメーカーが協働でマス商品を企画・開発する。ありそうでなかった仕組みが『マス・コラボレーションモデル』。F1層を中心としたユーザーの感性とメーカーの技術力をネット上で融合し、モノづくりに活用する。新しいプラットフォームを目指すアゲハのモデルに迫る。
第1回 『「惜しい」を「欲しい」に変えたい』
■なぜ、レジに向かわないの?
「売り場でこれいいなという感じで手に取るところまではいく。でも、レジには持っていかない。そんなお客さんの姿を山ほど見てきたのが、そもそものキッカケです」
どこか目を引いた、あるいは何かが気になった商品だから、いったんは手にする。ところが、それを持ってレジまで行くお客さんの割合は、ひいき目にみても3割に満たない。自らが渋谷109で販売員のアルバイトをしていたときの体験が、アゲハ独自のマス・コラボレーションモデルの根幹にある。
「私自身も同じことを感じていました。なので彼女たちの感覚がとてもよくわかりました。実際、女子大生120名にアンケートをとってみたところ、その73%がバッグを買うとき『だいたい良いけれども、細部のデザインが気に入らないために購入を断念したことがある』と答えています。トータルで22アイテムに及んだアンケート結果からは、バッグ以外にも服や靴などのファッションアイテムは『惜しい』による機会損失がとても多く生じていることがわかりました」
ファッションアイテムに関して女性は、滅多なことで妥協しない。彼女たちにとってファッションは、自分自身を表現するメディアである。わずかでもごまかしがあってはダメなのだ。
「手に取って考えているお客様に声をかけると、言葉には出さないだけで実はいろいろな感覚や意見をお持ちなんです。例えばデザインを少し変えてくれたらいいのにとか、違う色だったら買うのにとか。バイト時代には、こうした思いを少しでも引き出してレポートにまとめる仕事もしていました」
もとよりどのメーカーも、顧客の声をなおざりにするようなことは決してしてはいない。商品開発にあたっては、緻密なリサーチを重ね、量産前にモニタリングするケースだってあるだろう。
「でも実際に、売り場でのお客さまの声なき声を聞けているかといえば、それはすごく難しいわけです。仮に何とか聞き出せたとしても、その規模感や背景情報がわからないと、具体的な改良にはつなげられません」
もしQR(クイック・レスポンス)で改良できたとしても、購入をためらっていた客に伝えるすべはない。しかしである、そこにインターネットをうまくはめ込めばどうなるだろうか。
「惜しいによる機会損失を減らしながら、お客様の声を商品開発に活かすことができるんじゃないか。そう閃いたんです」
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FMO第31弾【株式会社アゲハ】
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