ユーザーとメーカーが協働でマス商品を企画・開発する。ありそうでなかった仕組みが『マス・コラボレーションモデル』。F1層を中心としたユーザーの感性とメーカーの技術力をネット上で融合し、モノづくりに活用する。新しいプラットフォームを目指すアゲハのモデルに迫る。
では、アゲハのサイトにはどんな仕掛けが組み込まれているのだろうか。
■プロトタイプをカスタマイズさせる意味
「一足飛びに、理想のマス・コラボレーションモデルに行き着けるとは思っていないんです。まずは自分たちがバッグメーカーとして、モノづくりを熟知した上で、カスタマイズによる製品開発を成功させることが必要だと考えています」
サイトではPCケースをはじめとしてバッグなど40アイテムが掲載されている。定価が表示されている商品は通販で買える。注目すべきは、各商品ページに設置された『カスタマイズ』ボタンの存在だ。これをクリックすると、気になった商品をベースにして『惜しい』部分をカスタマイズできる。
「例えば色を変えたい、別の素材にして欲しい、パーツを違ったものになどのカスタマイズ提案を受け付けています。提案デザインは公開され、他のユーザーからの投票やコメントも募ります。投票が20票以上集まれば商品化することになっています」
といえば思い浮かぶのが、エレファントデザインの『空想生活』やエンジンの『たのみこむ』だろう。これら先行モデルとアゲハの差異性はどこにあるのだろうか。
「私たちは小ロットでのカスタマイズ対応だけでなく、マスターゲットに向けた商品開発を狙っています。だから、買い物の延長線上で『惜しい』を『欲しい』に変えるカスタマイズモデルを採用しました。そうじゃないとマスの声は拾えないと思うんです」
慧眼というべきだろう。ゼロベースからデザインを起こし、欲しいものを形にしていけば、エッジの効いた製品が生まれる可能性は高まる。しかし、そのプロセスに難があるのだ。
「ネット・コミュニティで商品開発の議論をリードしているのは、たいていがイノベーター層でしょう。確かに彼らはプロ級のデザインスキルとITリテラシーを持っているます。でも、その人たちが結束しちゃうと、多くの一般ユーザーはディスカッションに入っていけない。すると、そこで生み出された製品は、マスに受け入れられなくなるリスクが高まるんじゃないでしょうか」
あくまでも目指しているのはマス・マーケットなのだ。ニッチ狙いだけではビジネスとしてのスケール感が出てこない。
「私は、一人でも多くの人をサポートしたいと思っているんです。ファッションを愛する全ての女性が、手軽に楽しく自分の望みを実現できるオンラインショップを創りたい。だから自社ブランドだけで完結しようなんてまったく思っていません。他社ブランドの取り扱いも増やして、お客様には新しいファッション&ショッピングのスタイルを、メーカー様には新しい商品開発の方法を提案したいです。ゴールは、お客様主導でマス・プロダクトを開発する商品開発のプラットフォームなんです」
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FMO第31弾【株式会社アゲハ】
2010.02.12
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