間違いだらけの北沢防衛相「軍服を海外に依存するなんて」発言

2009.12.08

経営・マネジメント

間違いだらけの北沢防衛相「軍服を海外に依存するなんて」発言

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

北沢防衛相は、「事業仕分け」で海外調達などによる自衛隊の制服購入費の縮減を求められたことについて、「軍服を海外に依存するなんて話は世界中で聞いたことがない。その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのか」と批判しました。 この発言には、企業で調達をめぐる誤った議論と重なる部分が多くありますので、北沢防衛相の発言を他山の石とするために、その誤りについて、確認していきます。

組織としては、仕事ができない事を環境のせいにする人間がチームに加わらない、そうした人間が加わってしまった場合にはそうした態度を変えていくべきであって、声は大きいが弱い者に組織全体を合わせていく事は、組織を衰退させる事になります。

■ 事に臨む

リスク管理の基本は、危機(リスク)に備える事でなく、予め危機を想定し対策を講じる事で、危機を回避する、それが無理ならば、リスクが生じる確率を下げる、もしくはリスクにより生じる損失を抑える事です。

国家安全保障では、その代償の大きさを考えると、事(戦争)に臨む事を考える前に、あらゆる手段で、いかに戦争を回避するかを考えるべきです。戦争は突き詰めると価値観の対立ですので、経済や文化交流を通じた相互理解、相互依存を進める事で、発生確率を抑制する事が可能です。

また、全く予兆を感じ取れず突発的に戦争に突入するとは考えられませんので、制服であれば、状勢の悪化に応じた調達先の切替を簡単に行えますので、数ヶ月分の在庫を持てば、「おんぼろ服で事に望む」事はありません。

最悪の事態を想定するならば、調達先から仮想敵国を外せば済む事であり、海外調達すべてを否定する話ではありません。外交戦略の観点からは、鎖国をするより、自分の味方になる国を増やしておいた方が得策です。

■ 世界中で聞いたことがない

「軍服を海外に依存するなんて話は世界中で聞いたことがない」という発言は先に誤りである事を指摘しましたが、そもそも、他者の後追いをする姿勢自体が問題です。

他者の後追いをするだけでは、決してイノベーションは起きません。日本社会の活性化のためにイノベーションが求めている中で、閣僚トップがそれを否定するような発言をされては、この国では、やはりイノベーションが起こらないとがっくり来てしまいます。

企業であれば、イノベーションを否定する事は死を意味します。企業の競争戦略の基本は差別化であり、他者と同じ事をするだけでは、不毛な価格競争に陥るだけで、お客様からも愛想をつかされてしまいます。差別化とは、他者が提供できない価値、イノベーションを追求する事に他なりません。

前例がないからという理由だけで組織のトップが挑戦を否定してしまっては、イノベーションどころか、時代遅れとなった慣行の是正もできません。

■ 聖域化が利権構造を生む

国防というテーマは、性格上秘密にしなければならない事は理解します。しかし、過度の秘密主義、聖域化は利権構造、腐敗を生みます。2006年の富士インダストリーズ、2007年の山田洋行の防衛省との契約における過大請求の発覚は記憶に新しい所です。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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