北沢防衛相は、「事業仕分け」で海外調達などによる自衛隊の制服購入費の縮減を求められたことについて、「軍服を海外に依存するなんて話は世界中で聞いたことがない。その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのか」と批判しました。 この発言には、企業で調達をめぐる誤った議論と重なる部分が多くありますので、北沢防衛相の発言を他山の石とするために、その誤りについて、確認していきます。
しかし、これでは、国民の生活は豊かにならず、生活が豊かにならなければ、社会の安定はありません。市場は需要人口×一人当たり需要額で決まり、人口が減っている日本では、内需拡大は投資対効果の観点から、高い効果が見込めません。これまでの少子化対策も効を奏していませんし、現在の生活苦、将来への不安、嗜好の観点から、日本の人口が早期に増加に転じる可能性は非常に乏しいと思われます。
一方で、移民受け入れには、国内の反発も強く、なかなか進まないでしょう。海外企業の日本への進出は、これまでの歴史や、市場としての中国やインドの台頭から、日本は海外企業から市場として見向きをされなくなっています。
何れの要素を見ても、日本は市場を海外に求めていかなければ、今後の国としての安定は得られません。そうした中で、根拠の薄い安全保障を理由に、政府調達において海外調達の窓を閉ざす事は、日本が締結しているWTO(世界貿易機関)政府調達協定にも反し、それによる他品目の市場確保への影響を考慮する必要があります。
■ おんぼろ服で事に臨むのか
北沢防衛相は「おんぼろ服で事に臨むのか」と海外調達で供給がストップした時の懸念を述べています。
馬子にも衣装でしょうか?
これを聞いた自衛官の方々は、口惜しくて涙が出た事でしょう。彼/彼女らの誰も、服がどうだとかいう中途半端な覚悟で任に就いているとは思えません。
よく「コスト削減はスタッフのモチベーションを下げる」という事を理由に、コスト削減を逡巡する経営者の方がいますが、なぜ「コスト削減がスタッフのモチベーションを下げる」のか、よく分かりません。
考えられる理由としては、「必要な投資を削るという誤ったアクションが、スタッフのモチベーションを下げる」という事ですが、そもそもコスト削減とは、「必要な投資ではなく、過剰な支出を削る」事です。安直な行動が問題であって、コスト削減に問題がある訳ではありません。
経費には既得権益の性格があり、コスト削減で出張手当や研修が減ったり、オフィスが手狭になる事に不満を述べる経営幹部やスタッフがいますが、大企業とベンチャー企業の両方を経験した人間から言わせてもらえば、環境に不満を言う人間によい仕事をする人間はいません。ベンチャー企業や中小企業では、環境が不備なのは当たり前で、それに文句を言っていては仕事になりません。大企業でも、良い仕事をしている人間は、環境に問題があっても、それを所与の条件として業務を遂行し、環境が業務目的の達成に障害となるようであれば、環境そのものを自らの力で変えていきます。
次のページ■ 事に臨む
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
週刊 戦略調達
2010.01.05
2009.12.30
2009.12.23
2009.12.15
2009.12.08
2009.11.25
2009.12.02
2009.11.17
2009.11.11
株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます