日本初、自分の骨で作る骨ネジ誕生のプロセス第3回

2009.11.19

開発秘話

日本初、自分の骨で作る骨ネジ誕生のプロセス第3回

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

患者自らの骨を使って骨ネジを作り、そのネジを使って治療する。従来行なわれていた金属ネジを使った手術に比べれば、手術が一度で済み、ネジ代も不要。患者さんに画期的なメリットをもたらす骨ネジは、どうやって開発されたのか。島根大学医学部・内尾教授のグループによる開発プロセスを紹介する。

第3回「実験が証明してくれたコンセプトの正しさ」

■意外な強さを見せた骨ネジ

「ネジの形、施術方法が固まったら、次は実験です。豚の膝関節をモデルに固定強度測定を行いました」

まず試されたのは、必要なネジの本数だ。一本だけだと強度が足りない。それなら二本を使えばどうなのか。

「二本使えば金属ネジと同じだけの固定強度のあることがわかりました。そしてこの実験を通じて、金属ネジと骨ネジの意外な違いも明らかになってきたのです」

違いは術後の時間経過による変化に出た。金属ネジの場合、引き抜き強度はネジを入れたときが最も高く、あとは時間が経つにつれ少しずつ落ちていく。ところが骨ネジは想定外の結果となったのだ。

「骨ネジの場合、時間が経つほどに引き抜き強度はどんどん高まっていくのです。なぜ、そんなことが起こるのかといえば、骨で作られたネジはまわりの骨と同化していくから。つまり形はネジですが、ある意味骨の移植を行っているのと同じ結果になるわけです」

ネジの周りにある生体の骨には、埋め込まれたネジを変化させる力がある。これぞまさに人体の不思議と言っていいのかもしれない。あるいは生命力の強さ、すばらしさと表現するべきなのだろう。いずれにしても自分の骨を使ったネジ、だからこその同化作用である。

「豚の関節を使った実験で術後の経過を見たところ、固定性は非常に良好、骨はきちんと癒合することがわかりました。強度的にはまったく問題ないレベルが確保され、完全に同化してしまっているのだからネジが何らかの悪影響を体に及ぼす心配もまずないことが実証されたのです」

だが、まだこれでも問題がすべてクリアされたわけではない。骨で作られたネジの有用性は証明されたとしても、ネジを作る元になる骨はどこから採るのか。患者さんからである。健康な骨を削り取っても悪影響はでないのだろうか。

■動物実験を繰り返して臨床手術へ

「もちろん骨を採取した部分がどうなるのかは、きちんと検証する必要があります」

骨そのものには再生機能はある。とはいえ、人為的に骨の一部分を削り取るような行為に対して、どれぐらいの再生力が発揮されるのかは実験で探るしかない。

「最初に強度予測を行いました。少し専門的になりますが有限要素法を使って骨を採った部位の強度予測をしたわけです。これによれば削り取る部分の厚みが5ミリ以内であれば、まず問題ないことがわかりました。そこで実験です」

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