ヒトが離職する数(率)、あるいは定着する数(率)といった値のみに関心がいきがちだが、組織にとって真の問題は、ヒトの「離れ方」、「根付き方」がどうなっているかだ
このような絆に裏打ちされたヒトは、よい根付きをする人財になるはずです。
また、仮に、転職その他で組織を離れることになっても、
その後、そのヒトは、やはり直接・間接的にその組織に貢献しようとするはずです。
人財輩出企業は自らの人的宇宙を形成する
絆化ができずに従業員が辞めていくことを人材「流出」といいます。
絆化ができている従業員が辞めていくことを人財「輩出」といいます。
IBMやリクルート、アクセンチュアなどは人財輩出企業として有名ですが、
それら企業にとって
ヒトが辞めていくということ自体は大きな問題ではなさそうです。
ヒトを人財として気前よく世の中に輩出する企業には、
また多くのヒトが入ってくる、という逆説的な循環がそこにはあるからです。
また、そこを“巣立った”人財たちは、ネットワークを組み、
“実家”あるいは“母校”的な存在の元の組織を中心に、“ヒューマン・コスモス”(人的宇宙)を形成します。
そしてそのヒューマン・コスモスは、元の組織、そして業界を動かす大きな力となっていくでしょう。
ヒトの離職や定着の問題をとらえるとき、
ヒトを囲いや縄(=報酬や制限)によって、
地べた(=組織内)で保持する(=リテンション)という発想枠を一段大きくしてはどうでしょうか。
つまり、個と組織の間で絆化(=ボンディング)がなされることによって、
個々の人財は、みずからの発露によって、その組織の心的引力圏内に自然と留まる。
あるヒトは地べた(組織内)に留まり、またあるヒトは地べたから離れ別空間(組織外)で留まるかもしれない。
そして彼ら人財たちは互いに人的宇宙を形成し、その組織を助けるという発想枠です。
私がイメージする「ヒトの観点から優れた会社」というのは、
やたら塀や柵で囲ってヒトを居付かせている様子ではなく、
ある恒星を中心として個性ある惑星があまた周回し、ふくよかな宇宙空間を形成している姿です。
確かに、経営者や人事担当者にとって、「3年で3割退職」という現象数値は衝撃的です。
しかし、今、入れるべき視射角は、
ヒトが離れていく数、根付く数への対症療法ではなく、
ヒトの離れ方、根付き方に深慮を配り、根本の体質改善を図ることだと思います。
次回は、ヒトの離職と根付きの問題の3番目
「安すれば鈍する:野ガモを飼いならすな」についてです。
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【3景】人財の離職と根付きの問題
2007.09.19
2007.09.08
2007.09.01
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。