日本初、自分の骨で作る骨ネジ誕生のプロセス第2回

2009.11.12

開発秘話

日本初、自分の骨で作る骨ネジ誕生のプロセス第2回

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

患者自らの骨を使って骨ネジを作り、そのネジを使って治療する。従来行なわれていた金属ネジを使った手術に比べれば、手術が一度で済み、ネジ代も不要。患者さんに画期的なメリットをもたらす骨ネジは、どうやって開発されたのか。島根大学医学部・内尾教授のグループによる開発プロセスを紹介する。

「ポイントは引き抜き強度なんです。簡単に抜けてしまうようではネジの意味がありません。強度は外径、ピッチそしてネジの形状に左右されます」

ネジ山の角度一つ取ってみても、どれほどのバリエーションがあるかは容易に想像がつくだろう。構造解析が行われ、さまざまなシミュレーションが繰り返された。文章で書いてしまえばこれだけの分量で終わってしまうが、実際に角度を少しずつ変えて検証するのはほとんど気の遠くなるような作業である。

「最終的にはネジ山の角度は直角ではなく60度にしたとき、もっとも強度が増すことがわかりました。この角度だと応力を分散させる効果もあるのです。角度を90度に設定した場合に比べて引き抜き強度は17%も増加します」

ネジの形が決まれば、次はネジをどれぐらいねじ込むかが検証される。これに関しても豚の膝関節などを使った実験が繰り返された。

「ねじ込む深さに関しては3ピッチという実験結果が出ました。とはいえ一つ課題をクリアしたら、また新たな課題が浮かんできます。次に解消しなければならなかったのはネジの頭に開ける穴の問題でした」

通常ネジ穴といえば、マイナスかプラスのいずれか。そこにドライバーの先を差してねじ込んでいくわけだ。ところが骨で作ったネジの場合はマイナスドライバーを使えないことがわかった。

「そもそも骨は金属ほど頑丈な素材ではありません。だから力の加え方によってネジ穴の部分が割れてしまうのです。径のサイズが小さいのでプラスの穴は選択肢とならない。どうやってねじ込むのかを考えた結果、思いついたのが六角の穴でした」

六角レンチを使うわけだ。が、極めて小さな径である。既製品ではサイズが合わない。

「だからドライバーも独自に開発しました。この研究に没頭しているときは本当に、自分が医者なのか機械屋なのかわからなくなることがありましたね」

一つ一つ問題を解決して、骨ネジの開発は進められた。しかし、まだまだ乗り越えるべき壁はいくつも残されていた。

⇒次回「実験が証明してくれたコンセプトの正しさ」へ続く(全四回)

『島根大学 関連リンク』
島根大学:http://www.shimane-u.ac.jp/index.php
島根大学医学部:http://www.med.shimane-u.ac.jp/
株式会社ナノ社:http://www.nanowave.co.jp/info/company.html

◇インタビュー:竹林篤実 ◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:武智正信 ◇撮影協力:スタジオマックス

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