患者自らの骨を使って骨ネジを作り、そのネジを使って治療する。従来行なわれていた金属ネジを使った手術に比べれば、手術が一度で済み、ネジ代も不要。患者さんに画期的なメリットをもたらす骨ネジは、どうやって開発されたのか。島根大学医学部・内尾教授のグループによる開発プロセスを紹介する。
「考えた末に思いついたのが、患者さん自らの骨を使ってネジを作ることでした」
骨でネジを作るとは、一見奇想天外な発想に思える。とはいえ、落ち着いて少し考えてみれば、実はこれほど理想的な素材もないことがわかる。
「患者さん自身の骨ということは、患者さんにとってもっとも親和性の高い素材なわけです。だから拒絶反応が起こる可能性はまずありません。しかも骨には同化作用があります。つまり骨の中に骨を埋め込めば、埋め込んだ骨は移植後に、まわりの骨に同化されるのです」
自分の骨を使うのだから、材料費もタダである。これぞまさに『コロンブスの卵』なのかもしれない。発想はすばらしい。とはいえ、骨を使ったネジがそう簡単にできるものなのだろうか。
「ネジをどうやって作るのか。プロセス自体は結構シンプルです。削り取っても問題がない部位の骨を取り、それを加工してネジを作る。おそらくこれまでにも同じアイデアを思いついた人はたくさんおられるのではないでしょうか」
プロの目から見れば、アイデア自体はそれほど奇抜なものではないのだという。ところが過去に骨でネジが作られた例はない。なぜなら、実際に作るとなると解決しなければならない問題がいくつもあるからだ。行く手に立ちはだかる難題を、内尾教授はどうやって解消していったのだろうか。
⇒次回「一難去ってまた一難」へ続く(全四回)
『島根大学 関連リンク』
島根大学:http://www.shimane-u.ac.jp/index.php
島根大学医学部:http://www.med.shimane-u.ac.jp/
株式会社ナノ社:http://www.nanowave.co.jp/info/company.html
◇インタビュー:竹林篤実 ◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:武智正信 ◇撮影協力:スタジオマックス
【INSIGHT NOW!の新特集企画:F.M.Oについて】
特集の切り口となるF.M.OすなわちFirst、Most、OnlyとはM&C研究所・弘中勝氏が創出されたコンセプト:F.M.Oのいずれかを実現できれば強力な差別化につながります。
特集では毎月、日本でも知る人ぞ知るF.M.O企業を取り上げ、その成功までのプロセスをご紹介していきます。お楽しみに!
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FMO第29弾【島根大学】
2009.11.26
2009.11.19
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2009.11.05