人財育成をいたずらに分解的に、定量的に、分析的に、科学的に、合理的にやろうとすればするほど、個々の働き手は自分をひらく・キャリアをひらくたくましさを失くす。
いずれにせよ、5問目の欄には、主観的で意志的な言葉が入ります。
この言葉づくりを、時間をかけてじっくりやらせることが
一人一人の働き手たちを全人的に目覚めさせます。
細分化された人材スペック項目に合わせて、そこに自分をはめ込んでいくアプローチ
とはまったく正反対のアプローチが、この提供価値宣言です。
なぜなら、この宣言によって
「自分は何者であるのか?(ありたいのか?)」、
「丸ごとの自分を使って何の価値を世に提供したいのか!?」が打ち立てられる。
で、そのために、いまの自分はどんな知識、能力を新規に習得せねばならないか、
補強せねばならないか、あるいはどういうキャリアチャレンジを起こした方がよいか、
などの思考順序になるからです。
その宣言をまっとうするために、
いまの仕事のやり方・方向性でいいのか、
いまの会社がいいのか、会社員でやっていたほうがいいのか、
日本に住んでいた方がいいのか、業界を変えた方がいいのか・・・
そんな発想がたくましく湧いてくるわけです。
そういう発想のもとでは、もはや会社側が用意する規定のキャリアパスなど意味をもたなくなる。
白紙の未来カンバスに、まったく自由に絵を描かざるを得なくなる。
で、もがいてもがいて切り拓いた道が、結果的に自分のキャリアパスになる―――
そういうたくましい働き様、生き方に転換するのです。
◇ ◇ ◇ ◇
最後に追加のワークをひとつ。
次のシートの空欄にみなさんはどんな言葉を入れるでしょうか――?
これは先程の提供価値宣言の発展形です。
自分の存在価値宣言を一言で表現するワークです。
私自身のサンプルを紹介すると、こういう表現になります。
・私は「“働くとは何か!?”の翻訳人」として生きる。
このワークは言ってみれば、自分の現下の人生の「最上位の目的」を
キャッチコピー的に表現することです。
私は「“働くとは何か!?”の名翻訳人」になることを8年前に決意した後、
それを実現するために
サラリーマンからの独立、コンサルティングサービスの研究、
ビジネス著書の出版、教育心理学の勉強、人事(HR)業界での人脈づくり、
など新規の知識習得や技能磨きをやってきました。
これらはすべて上の一大目的の下の手段であり、
実現のための最適解と思われる行動だと思ったからです。
私はいま、小説を一本書いていますが、これもその目的を果たすために閃いたものです。
人は、全人的に投げ出すに値するものをこしらえれば、
部分でやるべきことはいかようにでも見えてくるし、やれるものです。
ですから、大目的に対し情熱を燃やしているかぎり行き詰まりがない。
働く個人も組織も経営者も、
偏重した「還元論」ではなく、「全体論」の視点に寄り戻しをかけて、
働くこと・キャリアを今一度見つめ直す時期にあると思います。
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【キャリアを開く/拓く/啓くということ】
2009.11.23
2009.10.26
2009.10.11
2009.09.25
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。