FeliCa電子マネーのパイオニアとしてEdyを運営するビットワレットは、創業以来赤字経営から抜け出せずにいる。電子マネーの普及が進んでも黒字化が難しいのはなぜか? 同社CSO宮沢和正氏のインタビューを通して、ビットワレットの今とこれからを考える。[吉岡綾乃,Business Media 誠]
ビットワレットの誤算
ビットワレットは、2001年の会社設立以来1回も黒字になっていない。2008年の決算公告を見ても、売上高41億5000万円に対し、営業損失50 億4400万円。黒字化するには上記のようなコスト削減に加え、Edyでの決済回数・金額を急ピッチで伸ばしていく必要がある。現在の成長ペースではとても追いつかないのだ。
今回のインタビューで、宮沢氏が漏らしたある一言が印象的だった。「当初は5年くらいでなんとかなると思っていたんですけど……状況が変わった。誤算がありましたね」
誤算とは、Edyのライバルが増加したことである。当初想定していた競合はJR東日本のSuicaくらいだったが、2007年の春には同じく交通系のPASMO、流通系のnanaco、WAONという電子マネーが登場し、ユーザー数や利用件数を大きく伸ばした。また2005年冬にはNTTドコモがおサイフケータイを利用するクレジットサービス「iD」を発表、“チャージ不要、後払いの電子マネー”というキャッチフレーズで普及を進めている。こちらはドコモのおサイフケータイを中心に、かつてのEdyヘビーユーザー層を取り込む形で成長している。
ユーザーにとっての「Edyのメリット」を分かりやすく訴求することが不可欠
宮沢氏は「他社が参入することによって、電子マネーユーザーのすそ野が広がった。また、事業者同士で話し合いを持つことも増えている。ユーザーを取り合うというよりは一緒に増やしていくフェーズ」と話すが、実際には電子マネー間の競争は、2007年以降激化していると見ていい。
その理由は、ここ数年で複数の電子マネーが利用できるマルチ端末がコンビニを中心に増えたことにより、ユーザーが「好きな電子マネーを選んで使える」状態になったからだ。特におサイフケータイユーザーは、携帯に複数の電子マネーアプリを入れていることが多い。マルチ端末の設置が進み、他社の電子マネーが普及するほど、ユーザーが“Edy以外”を選ぶ可能性も増えてくる。
流通系電子マネーなら「使うとポイントが付く」、交通系電子マネーなら「同じカードで電車に乗れる」といった分かりやすいメリットがある。これに対して、Edyのメリットは一言で説明しづらい。ポイントシステムを外部との連携に頼る仕組みになっているからだ。
ポイントシステム「Edyでポイント」
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電子マネーパイオニアの苦境~ビットワレット「Edy」の今
2009.10.08
2009.10.06