人財の離職と根付き問題1 脆弱化するマインド

2007.09.01

組織・人材

人財の離職と根付き問題1 脆弱化するマインド

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

「3年で3割が離職」という現況に対し、雇用組織側が意識せねばならない観点を3つ取り上げ考察する

一方、働く本人たちも、知識やスキルが一人前についてきたこと、
あるいは、ただ多忙に働いていることだけで、何か仕事のできるプロ感覚になって、
マインド・観への自問をしようとしない。

それでも、1層・2層に関して、自分の棚卸しをし、
現職での仕事成果をそこそこに語ることができれば、
人手不足の昨今、情報をいろいろに集めて、年収アップの転職が簡単にかなう状況がある。

今の若い働き手の職選び・キャリア行動を観察してみると、
意志的・思惟的な基盤づくりへの進行がみられず、
功利的・反応的な“気分”によって流動し、それをますます先鋭化させもしている現状が感じられます。
(ま、この傾向は、世の中全体がそうなっているわけですが)

下図に「働く個」と「雇用組織」の理想状態を描いてみました。

個は、みずからの第3層を自律的に醸成し、
他方、組織は、従業員の第3層の自育を促す形で、
双方の価値・目的を共有化することが理想形となります。

ところが、現状は下のとおり
個々の第3層の醸成がおざなりになったままなので
個と組織の間での価値・目的の共有化がなされず
双方の結びつきは極めて脆弱な状態になっています。

そして、揺らぐ働き手たちは、
外部の雑多な転職情報の風に吹かれ、
あるいは、現職・現環境への不満や不安に対し辛抱がきかず、安易に転職カードをきってしまうわけです。

個のマインド・観の醸成には、組織文化や制度・施策も必要

したがって、揺らぐ若年層従業員たちの離職(安易な転職)を減らし、
人財として組織に根付かせるためには、個々における第3層の醸成が必須です。

第3層は、自育が原則ですから、
まずもって個々の働き手がそのための行動を起こすことが求められます。
(そのきっかけを与える研修プログラムを開発するのが、まさに私の事業でもあります)

しかし、個の意識醸成のみでは不十分です。

組織側は、働く自律マインドの醸成を個々に促すよう
経営者や現場のマネジャーたちは、
肉声で「働くことの意義・思想・哲学・ビジョン」を語らねばなりません。

また、中高年社員たちがカッコよく働いているロールモデルが社内のそこかしこに存在せねばなりません。
「年次が上がって、ああいうサラリーマンにはなりたくないよな」と思われる人ばかりの組織に、
誰が永く勤めたいと思うでしょうか。
転職市場で自分が売れるうちに、どこかほかへ移ってしまおうとするのは無理のない話です。

また、人財配置や異動の制度、処遇制度、育成システムなど、制度・施策面の充実は言うに及びません。

次のページ<補足>ヒトをないがしろにする組織の構図

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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