マーケティングの基本から今日のバイオ燃料の問題を考えてみた。適正な生産もなされているであろうが本来の価値をスポイルする”便乗”を看過することはできない。
マーケティングの基本であるニーズとウォンツの関係。
「ニーズとは、状態に対する欲求。ウォンツとはニーズを満たす手段やモノに対する欲求」。
もう少し詳しく記す。
「理想とする充足状態と現状の不足状態のギャップがニーズ。そのニーズのギャップを満たす具体的な方法がウォンツ」である。
有名な言い回しがある。
「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を空けたいのだ」。
つまり「ドリルをください」と言っている顧客は、何らかの理由で穴を空ける必要に迫られている。
しかし、その道具が手元にない。
よって、穴を空ける実現手段としての「ドリル」を欲していると説明できる。
では、「バイオ燃料をください」という言葉は・・・当然「ウォンツ」だ。
とすれば、どんなニーズ、つまり「理想とする充足状態と現状の不足状態のギャップ」があるのか。
至極当然のことで、「理想とする充足状態」は、地球温暖化に歯止めがかかること。
「現状の不足状態のギャップ」は、従来の化石燃料では環境負荷が高いということ。
そして「ニーズのギャップを満たす具体的な方法」として、環境負荷が低いといわれるバイオ燃料への転換が求められているということになる。
しかし、全くそのニーズとウォンツの関係が根本から覆った光景が新聞紙面に掲載されていた。
8月25日(土)日経新聞夕刊・一面の特集「環境SOS」。「アマゾン森林破壊」「”バイオ燃料”農地の皮肉」とある。
大豆がバイオ燃料向けとして需要が増え、密林を切り開いた土地でも育てられているとある。
別の場所であろうが、同じバイオ燃料の原料であるサトウキビの栽培のため森が伐採され、このままでは生活の場を失うと訴えるアマゾン先住民族の老人が以前メディアに取り上げられていた。
アマゾンではここ5年で東京都の10倍に相当する熱帯雨林が失われたという。
アマゾンの熱帯雨林は地球上の酸素のおよそ20~30%作っている。
その熱帯雨林を伐採するということは、地球環境へ深刻なダメージを与えることは誰にでもわかる。
「バイオ燃料」が求められるのは、「理想とする充足状態」として、地球温暖化に歯止めをかけるため。
その根本的なニーズを無視して、「ウォンツの対象物」だけを供給するのは完全な「便乗」であり、許されることではない。
バイオ燃料は既存のエンジンを改造することなくそのまま使う事が最大の利点だ。
本来、「ニーズギャップ」を埋めることができる「ウォンツの対象物」として、「すぐにでも始められる環境対策の優等生」であるはずが、一部の人間の悪意で本来の価値がスポイルされてしまった。
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2007.09.02
2007.12.10
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。