「こんなにイイのにナゼ売れないの?」という思い、恐らく商品やサービスを開発した方なら一度や二度は経験されている「心の叫び」ではないだろうか。 しかし、「売れない」理由はある程度古典的なフレームワークで説明できる。
出張先のホテルでテレビをつけると、ワールドビジネスサテライトをやっていた。
慌ててメモを取ったので少々間違っているかもしれないが、「フマキラー・ベープマット」が「キンチョー・蚊取り線香」を凌駕するまでの話であった。
番組の要点をかいつまむと以下の通り。
・フマキラーは噴霧式殺虫剤ではトップシェア。
・しかし、除虫菊由来の「キンチョー・蚊取り線香」は就寝時の防虫剤として確たるポジションを築いている。
・そのポジションを逆転すべく、化合物がフマキラーで開発された。
・ポイントは蚊取り線香は6時間しか燃焼時間が持たないが、化合物は加温の工夫さえすれば8時間持つ。
・2時間の差は、蚊の主たる活動時間である、「宵の口」と「明け方」の主に明け方に効果を発揮する。燃焼型6時間では早朝の蚊の猛攻は防げない。
・技術的問題を克服し、満を持して「電気式蚊取り器」を上市したフマキラー。
・・・が、全く売れなかった。
さて、番組をご覧になっていない方は、一旦ここで考えていただきたい。
「ナゼ売れなかったのか?」
番組では、フマキラーがいかな工夫によって「売れる」しくみを作ったかを紹介していた。
答えはこうだ。
フマキラーは「蚊取り線香」は煙が立ち上ることで、幼児のいる家庭にとっては使いにくいだろうと考えたが、「無煙」「無臭」は逆に「効く気がしない」と判断されたのではないか、と分析した。
実に正解なのだ。
ここからは、古典的なフレームワークに従って解説しよう。
E..M.ロジャースの「イノベーション普及学」。
残念ながら、本書は邦訳は絶版となっており、古書もプレミアがついて非常に効果になってしまっている。
同書で述べられている、「イノベーター論」や「普及曲線(S字曲線)」はマーケティングの各種入門書にも(解釈の間違いが多々あるが)紹介されているものの、「イノベーション普及速度」という理論が記されている例は少ない。
「イノベーション普及速度」とは以下の5つの要件を指す。
1.相対優位性…今まで使っていたものと比べ、いかに優れているかが分かりやすいこと。
2.両立性…当面は今まで使っていたものを捨てることなく、両立できること。
3.複雑性…理解できないほどの複雑性を持っていないこと。逆に当たり前に見えすぎない程度に複雑であること。そのバランス。
4.試行可能性…とりあえず、本格的な導入の前にプロトタイプやデモなどで効果を認識できること。自ら触ってみることができること。
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2007.12.27
2008.02.13
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。