「研究」と「開発」 この2つの違いをご存知ですか? 厳密な議論は、 文末にご紹介している参考文献をご覧いただくとして、 ここではできるだけわかりやすく説明してみます。 (わかりにくかったら私の失敗です。ごめんなさい!)
研究と開発をそれぞれ一言で言い換えると、
研究・・・「知の創造」
開発・・・「知の具体化」
となります。
「知の創造」とは、
・誰も知らないこと
・誰も見たことがないこと
を発見することです。
知の創造に取り組む「人間の営み」(行動)を
「科学」
と呼びます。
そして、上述した新たな発見のことは、
「科学的知見」
と言います。
例えば、
「熱力学の法則」(エントロピーの法則など)
は、研究によって発見された「科学的知見」
のひとつですね。
一方、「知の具体化」とは、
科学的知見を集積・統合して、
なんらかの目的に寄与する「製品」として
実現することです。
この知を具体化する「人間の営み」(行動)を
「技術」
と呼びます。
さて、研究で得られた「科学的知見」は
そのままでは人間の生活の役には立ちません。
科学的知見をベースにして、
実際の製品として具体化されることによって、
初めて人間の生活に役に立ちます。
したがって、
研究・・・「虚学」
開発・・・「実学」
と対比されることもあります。
しかし、「研究」における
イノベーションがあるからこそ、
製品の「開発」上の大きな進展が可能です。
ですから、科学のことを
「虚学」
といった揶揄したような言葉で呼ぶのは失礼ですし、
短期的な収益につながりにくいからという理由で、
「基礎研究」を軽視してしまうと、
長期的には製品開発力の弱体化をもたらします。
この「研究」(知の創造)と
「開発」(知の具体化)の関係は、
・横軸(X軸)・・・「研究」
・縦軸(Y軸)・・・「開発」
として展開するとさらに把握しやすくなります。
「横軸」(X軸)を左から右へと進むことは、
より有力な優れた知が創造されていくことを意味します。
これは、例えば
「天動説」
という知が、
「地動説」
という新たな知に置き換わることであり、
「パラダイムチェンジ」
としばしば呼ばれます。
一方、「縦軸」(Y軸)を下から上に進むことは、
既存の科学的知見に基づいて技術が進化し、
新たな製品が生み出されていくことを意味します。
例えば、以前は可能とは思っていなかった
「フェライト磁石の発見」
という知の創造に基づいて開発されたのが、
「磁気テープ」
であり、その進化形として
「フロッピーディスク」や「ハードディスク」
が製品化されてきました。
そして今、フェライト磁石とは異なる
「知」の創造に基づいて開発された
「フラッシュメモリー」
が、従来のフェライト磁石ベースの記憶媒体に
置き換わろうとしているわけです。
さて、この「知の創造」と「知の具体化」
の2つの視点で考えると、
・イノベーションには
どのようなタイプがあるのか?
また、
・なぜイノベーションを起こせる企業と
そうでない企業に分かれるのか?
といった面白い議論ができるのですが、
長くなりますのでまた明日。
※『イノベーション 破壊と共鳴』
(山口栄一著、NTT出版)
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2008.02.14
2008.02.15
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。