ナレッジワーカーにとって「アウトプットとインプットとのバランスをどう取るか」は大きな関心事だ。そんなヒントになればと、この記事を記す。
オーストラリアの先住民、アボリジニの楽器「リジリドゥ」をご存じだろうか。
彼の民族音楽には欠かせない存在であり、空気を低く震わすその音色はいつまでも絶えることなく鳴り響き、聞く者の魂までも震わせる。
「リジリドゥ」。「ノンブレス」とも呼ばれる別名が表す通り、一人前の奏者は「一体、いつ息をしているのだろう?」と心配になるぐらい、いつまでもその楽器を吹き続ける。
その秘密は、彼らは「息を吐きながら吸う技術」を体得しているらしい。
現地では土産にリジリドゥが売っている。
購入して、少し練習すれば何とかそれっぽい音は出る。が、ちょっと鳴ってオシマイ。「吹き続ける」なんて状態には程遠い。
土台「息を吐きながら吸う技術」なんて一朝一夕にできるわけがないのだ。
転じて、思考プロセスの話。
常々思っているのは、自分自身の「ナレッジのインとアウトのバランス」。
コンサルティングやプランニング、講演や研修の講師、各種の執筆活動。
これらは基本的には「アウトプット」だ。
きちんと新たな情報やナレッジを「インプット」しなければ枯れてしまう。
枯れると「つまらない人」になり、仕事にならなくなる。とても困る。
なので、できるだけ最低でも自分の時間の10%は純粋にインプットのための時間として確保するように努めている。
だが、そうもうまくいかないのが現実。また、圧倒的なアウトプット量のためには僅か10%のインプットの時間では足りない。
そこで「リジリドゥ」である。
ナレッジをアウトプットしながらインプットするのだ。
コンサルティングでは、アウトプットしながらクライアントの反応や言葉から新たな情報や気付きをインプットする。
講師活動では、アウトプットしながら受講者とのやりとりでインプットを得る。
執筆活動では、頭の中にストックされている情報を再構築しながらアウトプットして、再び整理体系化してインプットする。
全てアウトプットしながらインプットを行う。自分の頭の中で、ナレッジを再生産していくことがポイントだ。
何か一つが終わった時に真っ白になり、また一から情報収集を始める苦労をしないためにも重要なことだ。
筆者は誰に教わったことではないが、他にも知らず知らずにこうした頭の使い方をしている人も多いのではないだろうか。
「自分は今、何をアウトプットしていて、そこから再度インプットできるものはないか」を意識していれば難しくはない。
息を吐きながら吸うこと。恐らく無意識にできることではない。だが一度コツをつかんでしまえばいつまでも楽器を吹き続けることができるのだ。
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2007.08.30
2007.08.30
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。