今年3月17日、ファーストリテイリングがデザイナーのジル・サンダーとの契約を発表し、ファッション界に激震が走った。「JIL SANDER」ブランド辞任後の彼女の動向が注目されていた中、コンサルティング会社「JS CONSULTING社」を立ち上げての契約であった。その独自のコレクション「+J(プラスジェイ)」がいよいよ姿を現した。
価格と価値の正比例した関係を「バリューライン」と呼び、市場の相場はその上に形成されていく。そして、そのバリューラインを上回る価値を提供できたものが顧客の支持を集めることができるのだ。
「まあまあの品質で低価格のもの」つまり、「品質」×「価値」の軸で考えた時の「グッドバリュー戦略」のポジションをg.u.は目指している。ユニクロは最高品質で低価格の「スーパーバリュー戦略」のポジションを目指していたが、g.u.との棲み分けで最高品質で中価格の「高価値戦略」のポジションに切り替え、収益確保を図ったと考えられる。
しかし、ユニクロの「価値」の軸を考えてみると、実は依然「スーパーバリュー」のポジションにいるのではないかとも考えられる。ユニクロが提供するものは、ただの高品質だけではない。低廉な価格にもかかわらず、ヒートテックやドライ製品など高機能生も提供している。
加えて今回の「+J」の展開でユニクロの価値は一気に高まったのだ。単品で15,000円以下という衝撃のプライスでジル・サンダーのデザインが手に入るのだ。これを「スーパーバリュー」と言わずして何と呼べばいいのか。
それでも価格にこだわる層はg.u.で囲い込んで、品質・機能・デザインという価値を、その価値からすれば最低価格で提供するという、ファッションの価値観を大きく塗り替えるチャレンジをユニクロとジル・サンダーは始めたのである。
もはや、向かうところ敵なしの状態で、ファーストリテイリングは2010年売上高 1兆円の目標に向かって突き進んでいる。
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2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。