金融不況をきっかけに大きく変化した消費者の意識。今何が必要とされ、何が必要とされていないのか。東急ハンズやAZスーパーなど、販売の現場の動きから分析する。[郷好文,Business Media 誠]
プライベートブランド強化、生鮮コンビニ、地産地消の各店舗仕入れの強化、ドラッグ取り扱いなど業態転換を急ぐわけだが、“コンビニ価値へのダダイズム”は押し寄せる波のよう。
ダダイストにどう対処しますか?
代わりに支持されるのがベーシックな商品や店舗。ユニクロ、無印良品、餃子の王将、西友の49円コロッケが代表例。少し前までは“隣のヤツと違うこと”が消費の原動力になっていたのに、今はひたすらベーシックで“こだわり否定”。おかげで百貨店やブランド品、セレクトショップもさっぱり。
無限の好奇心を持つと自負する私自身、最近はデザイナー品やブランドに空しさを覚えている。最新のトレンド情報を伝えるめざましテレビの「MOTTOいまドキ」にもシラケ気味。単に「年をとっただけ?」という声もあるけれど。
とはいえ、「ダダイズムは厭世気分。経済の回復とともにやがて鎮まるさ。ヘタにダダイズムのトレンドに乗って利益を損なうのはイヤだし、雲が晴れるのをじっと待って、今の売り方を続ける手はある」という向きもある。う~ん……でも、ダダイスト消費者たちを見ると、もう昔に戻らないようにも見える。迷う時は変化を先取りする事例を参考にしよう。
生活素材の提供と真のコンビニ
1つは6月25日にリニューアルした東急ハンズ渋谷店。コンセプトは“ヒント・マーケット”。
※出典:東急ハンズ(クリックで拡大表示)
豊かな生活を過ごすためのヒントを、品ぞろえだけではなく実演販売やワークショップ、フロアの“ヒント・スタッフ”が提供する。各フロアの “Hint Pit!(ヒント・ピット)”では売り場ごとに異なるデザインの休憩スペースを置き、インテリアや工作のヒントを散りばめる。
ここ数年の東急ハンズの不振は、グッズばかりの品ぞろえでバラエティショップ化が行き過ぎたせいだった。いくらハンズでも品ぞろえだけではネットに勝てない。反転攻勢の原点となったのは“ハンズ=手づくり”。生活を自分で作り上げる喜び支援、生活素材とその情報提案という今回のコンセプト、私は大賛成だ。
もう1つは鹿児島県阿久根町の「AZスーパー」。人口わずか2万4000人の町に、売り場面積1万5000平方メートル、35万品目の品そろえの、日本で2番目に大きい24時間営業の巨大スーパーがある。
※AZスーパー(鹿児島県霧島市の3号店、Sanjo氏撮影)
生鮮品のスーパーでありながら、ホームセンターとの合体店でもあるため、大工道具やガソリンスタンド、クルマ、車検まで販売。見学に行ったある百貨店の方によると、各売り場の品ぞろえの広さ・深さ・豊かさは百貨店の比ではないという。日々の仕入れを優先したエブリデイ低価格なので、Webサイトも制作する必要はないようだ。まとめ買いもついで買いもお散歩もできる。送迎バスや宅配サービスなど、老若男女、町民みんなのコンビニなのである。
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