仕事の3種類:「A→A+」「A→B」「0→1」

2009.07.11

仕事術

仕事の3種類:「A→A+」「A→B」「0→1」

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

【仕事の基本概念シリーズ】仕事とは、取りかかろうとするモノやコトに対し、能力を使い・意志を投入して、Before→Afterで価値を創造する行為である。

◆感謝の念に表れるよい仕事の思想
仕事について、もうひとつ触れておきましょう。
それは、仕事の“思想”です。

西岡常一さんは1300年ぶりといわれる法隆寺の昭和の大修理を取り仕切った
知る人ぞ知る宮大工の棟梁です。彼の言葉を紹介します。

「五重塔の軒を見られたらわかりますけど、
きちんと天に向かって一直線になっていますのや。
千三百年たってもその姿に乱れがないんです。
おんぼろになって建っているというんやないんですからな。

しかもこれらの千年を過ぎた木がまだ生きているんです。
塔の瓦をはずして下の土を除きますと、
しだいに屋根の反りが戻ってきますし、
鉋をかければ今でも品のいい檜の香りがしますのや。これが檜の命の長さです。

こうした木ですから、この寿命をまっとうするだけ生かすのが大工の役目ですわ。
千年の木やったら、少なくとも千年生きるようにせな、木に申し訳がたちませんわ。

・・・生きてきただけの耐用年数に木を生かして使うというのは、
自然に対する人間の当然の義務でっせ」。

      ―――(『木のいのち木のこころ 天』より)

仕事という活動の入口と出口には、インプットとアウトプットがある。
ものづくりの場合であれば、必ず、入り口には原材料となるモノがくる。
そして、その原材料が植物や動物など生きものの場合、その命をもらわなければならない。
古い言葉でいえば「殺生」です。

そのときに、アウトプットとして生み出すモノはどういうものでなくてはならないか、
そこにある種の痛みや祈り、感謝の念を抱いて仕事に取り組む人の姿を
西岡さんを通して感じることができます。

「よい仕事」とは、物事をうまくつくる、早くつくる、効率的につくることではない。
それは「長けた仕事」というべきものです。
「よい仕事」とは、「よい思想」に根づいている仕事のことです。
思想というと何か堅苦しいことのように聞こえるかもしれませんが、
要は、真摯でまっとうな倫理観、道徳観、ヒューマニズムをベースにすることで、
それがもう充分な思想となる。

毎日の自分の仕事のインプットは、決して自分独りで得られるものではなく、
他からのいろいろな生命、秩序、努力によって供給されている。
であるならば、自分の仕事のアウトプットも、他への恩返しの気持ちで、
価値を増加させた形で生み出し、送り出してやらねばならない。

自分のアウトプットが、今度は他の仕事(=価値創造活動)のためのインプットとなり、
世の中全体(宇宙・自然界全体といってもいい)で「環」になっているからです。

*詳細の議論は、拙著『“働く”をじっくりみつめなおすための18講義』で。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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