~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
そういわれてみて、よくよく自分の服装を見てみると、宮田は自分
がハワイで買ったTシャツ、尻にUCLAなどと白抜きで印刷された
黄色の短パン、サーファーがよく履いていた草履姿で座っていること
を初めて自覚した。
< この格好って、めっちゃ結構アメリカナイズされてるなー >
出張にあたっての注意点として、アルコールに厳しいという点しか
アドバイスをしなかった東京本社の人事部とテヘラン店の総務を恨
んだ。
< しかし、そ、そんなん、急にいわれても、男もそうなんやなん
て、普通そんなこと知ってるやつ日本に居るかいな!? >
と思いながらも、宮田はこう言った。
「わ、わかった。 わかったから。 すぐに部屋に行って着替え
てくるから」
「No! お前が本当に着替えるかどうか、部屋まで同行する!」
かくして宮田は、自分の部屋まで連行され、数人の屈強な銃を持っ
た兵士に取り囲まれながら、パンツ一丁になって着替えを余儀なく
された。
< また、パンツ一丁か・・・。
とんでもない国に来てもうたな・・・。 ほんまに自分は
日本とは全然ちゃう異国の地にいるんやねんな・・今・・ >
ということを強烈に意識した。
部屋の壁には、空港の入国審査へと向かう通路にあったのと同じ
最高指導者のホメイニ帥の大きな写真が飾られ、またまた宮田を
睨みつけていた。
< ホメイニさん。 いい子にしますから、もう勘弁してーな。
頼のんまっせ、初日から、ほんま・・・ >
部屋の外からは、毎日定時になると街角のスピーカーから流され
る、コーランの物悲しい旋律が聞こえてくるのであった。
< あー、それにしても、何で一日に2回も人前で、それもよりに
よって顔もヒゲもメッチャ濃い野郎の前でパンツ一丁にならな
あかんのやろ・・・ >
ほとんど水のようなぬるいシャワーを浴びて、気を取り直した宮田
は、その日の夜、無事持ち込んだ日本酒1ダースを大事にかばんに
隠し持ちながら、依頼した張本人である永井支店長の待つ大日本商
事テヘラン支店へタクシーを飛ばしていた。
次回へ続く。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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