~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
係官の顔色がだんだんと赤くなってくるのを宮田は見ていた。
係官は週刊誌を持ったまますぐに奥の部屋に去っていき、すぐに仲
間の係官数人と共に宮田のところに戻ってきてこう言い放った。
「お前の持っている週刊誌はイスラムの戒律違反である。 再度お
前の全ての持ち物ならびに身体の検査を徹底的に行うことにする。
奥の個室に連行し、そこで取調べを行う!」
< し、しもた! 週刊誌でひっかかるとは・・・ >
とっさに宮田は、その本欲しければ君にあげると言おうとしたが、
そんなことで流れが変わるはずもないと悟って観念した。
< なるようになれ! とはこのこっっちゃ。 くそ! >
こうなっては開き直るしかない。
先ほど内村技師に言った言葉を思い出していた。
個室に入ると再びスーツケースを開けられ、今度は中身をひとつ残
らず出されて、全て机の上に並べられた。
宮田はパンツ一枚の格好で立たされた。
いよいよ問題の日本酒をつつんでいるタオルに係官が手を掛けた。
宮田自身さえもいかにも怪しげだなと感じるような荷姿を係官が目
にしたとき、係官もこれは極めて怪しいと感じたのか、他の数人の
同僚係官にあごで合図を送り、一緒に確認するよう依頼した。
「開けろ!」
係官の指示に従って、タオルや紙をはがして、丸裸となった日本酒
の紙パックを係官に手渡した。
紙パックの表面には日本語で、(清酒 田万)と、見事に立派な太
い字で描かれている。 日本人なら誰でもすぐに日本酒とわかるく
らい有名な銘柄である。
係官が数人がかりで紙パックの外装の表面をなめるようにして観察
している。
「これは何だ!?」
係官が疑いの眼で聞いてきた。
次回へ続く。
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