~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
宮田は、マイクからヒントをもらったお陰で次の
ステップに進めそうだと感じていた。
そこへ、突然関から声が掛った。
「おーい。宮田。ちょっとこっちへこい。
出張の件で話がある」
突然関に呼ばれ振り返ると、課長の細川の机の
ところに関が立っており、課長と一緒にこっちを見て
手招きしている。
また、どこかの国内の地方都市への出張かと思って、
細川と関のところへ歩み寄った。
「何でしょうか?」
「そろそろ君に海外出張に行ってもらおうと思っている」
思いもよらぬことを細川課長が切り出した。
すでに同期の連中の大半は海外ビジネスを中心に任され、一部の
連中は中国などに駐在を命ぜられるなどして海外を飛び回っていた
ので、その連中に大きく後れを取っていたと感じてきた宮田にとっ
ては、細川課長のその一言に、いよいよ念願のその日が来たかと
心中こう叫んでいた。
< やったー! これや。これやがな。待ちわびとったことは!
海外出張! くー。 エーことばの響きやないの! >
飛び上がらんばかりのうれしい思いであった。
大学時代にあこがれていた海外との仕事。
頭の中にニューヨークのマンハッタンの高層ビル、霧のゴール
デンゲートブリッジの鮮やかで華麗な姿、はたまた英国のロンドン
ブリッジの豪華な偉容などが横切った。
「ありがとうございます! がんばります!
ところで、どこへ出張するのでありましょうか?」
「イランだ」
関がニヤニヤしながら言った。
「は? イ、 イラン・・・ですか? あの中東の?」
「ばっきゃろー。他のどこにイランがあるってんだ。
イランといえば世界にひとつしかなかろうが!」
「あのー。 お言葉ですがイランは今イラクと交戦中で、
戦時中ではなかったでしょうか?」
「だからどうした。いやならいいんだぞ。
イランは {いらん} ってか?」
< しょ、しょーもな! どついたろか! こいつ >
と思いながらも言い切ってしまった。
「い、いえ、行かせてください。がんばります!」
その言葉を聞いた細川課長が間髪入れずに言った。
「ではがんばって行ってきてくれたまえ。
あそこにうちの大事なお得意さんがあることは君も知っていると
思う。出張の目的は関さんと十分打ち合わせをするように。
それと、現地は危険地域に指定されているので、万が一のことも
考えて安全対策に関しては人事部と事前に十分相談するように。
ちなみに、そういうことだから危険地手当もでるはずだ。」
細川課長にそう言われ、ポンと肩をたたかれた宮田は、
とぼとぼと自分の席に戻った。
< し、しもた! 安請け合いする前に、先に行き先聞くんやった!>
勢いで、「行きます!」なんて即答するんじゃなかったと後悔した。
目の前に座っている篠原由美子が心配そうな顔でこちらをチラチラと
見ている。
「宮田くん。どこに出張しろっていわれたの?」
「イランって言われました。」
「えー!? イ、イラン? それは、・・・大変!」
次回に続く。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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