2008年12月にF1からの撤退を決めたホンダ。そのホンダの後継チーム、ブラウンGPが破竹の快進撃を続けている。撤退するために、わずか1ポンドという価格でチームを売却したホンダは、何を得て何を失ったのだろうか? 撤退後の半年を振り返ってみた。[吉岡綾乃,Business Media 誠]
しかしその後もブラウンGPは破竹の勢いで勝ち進んでいる。2009年のF1グランプリは、3月末から11月初頭まで全17回開かれる。第6回大会(モナコグランプリ)までで実に5回の優勝を飾り、圧倒的な強さを見せているバトン選手は、現在、ワールドチャンピオンに最も近いところにいるといえる。
好成績なのはバトン選手だけではない。チームメイトのルーベンス・バリチェロ選手も3位以内に頻繁に顔を出している。バトン選手の個人プレイでなく、ブラウンGPはチームとしていい成績を挙げているのだ。
今年のF1は全体的に、去年のチーム成績がまったくあてにならない展開で進んでいる。去年優勝を争ったマクラーレンとフェラーリが共に低迷しているのだ。ブラウンGPに次いで好成績なのは、レッドブルとトヨタである。ブラウンGP対トヨタでトップを争う展開も見かける。
莫大な広告価値を持つブラウンGP
筆者が思うに、F1撤退に際してホンダは2つの大きなミスをしたのではないか。1つめのミスは、F1において今や誰も“ホンダ”と口にできなくなってしまったことだ。ブラウンGPの名を呼ぶとき、ほとんどの人は心の中で(ホンダじゃなくて)と付けているだろう。実況中継を見ていて、アナウンサーが無意識に「ホンダのバトンが……」と話していたのも聞いたことがある。ブラウンGPが活躍するたびに、「本来ならこれはホンダのはずだったのに」という思いはどうしても残る。
もしブラウンGPをホンダと呼べたら、どれくらいの宣伝効果があるのだろうか。ブラウンGPの広告価値については、ちょっと面白い数字がある(※)。シーズン開幕前、スポンサーのVirginがブラウンGPと結んだ契約は1レースあたりたったの25万ドル(約2400万円)だった。2009年開幕戦(オーストラリアGP)1レースでブラウンGPのクルマがテレビに映った時間は42分38秒。これはVirginにとって、1042万8000ドル(約 10億円)相当の価値になるというのだ。
これはスポンサーとして車体にロゴが表示されたVirginの数字だけだから、チーム全体にはこの何倍もの広告価値があることになる。弱いチームより、強いチームのほうが広告価値が高いのは当然。開幕戦以降勝ち続けているブラウンGPの広告価値は、今も右肩上がりで増し続けているはずだ。
(※)SportsPro magazine"Virgin gets US$10.4 million of coverage from US$250k F1 investment"より
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